twitter: kaerusan
つぶやく「ラジオ 沼」: radio_numa
■話したり歌ったり
2010.3.22「音遊びの会」にて。
「永遠野球」中継中の細馬+中尾。
撮影:松尾宇人さん
2010.3.28「滋賀会館の放課後」。かえる属(細馬+中尾)。
彦根へ。森さんに来てもらって回想法の書き起こし。
新年度を前に部屋を片付けたかったがどうやら途中でタイムアップ。ええと、明日は出発なんだっけ。なぜかカバンに査読原稿を詰める。こんなにも予備知識なしで行く海外旅行も珍しい。
朝、高齢者の立ち上がり行動について発表。議論百出。古山さんの発表はオズュリュックの議論を丁寧に検証し直したもの。恒例となった寿司屋での昼食のあと、平さん、城さんとお茶。東京へ。なぎ食堂でご飯を食べているときに、かなしいしらせ。もうどこにも行く気にもならず、歌を口ずさんで帰る。夜の歌舞伎町の人波。この歌をくれた人こそいればいいのに。
2006年から始まった身振り研休会合宿も早や五年め。昼夜にわたり身振りのことばかり考えながら旨い魚を食う。今日は午後に城さんのジェスチャーマッチング、関根さんの発表のdisguised adaptor話、夜は武長さんの創造的身振りの発表。午前二時過ぎまでなんやかやと。
SONYからハンディタイプのHDデジカム「bloggy」というのが出たので合宿風景を撮影してみる。なぜこの機種かといえば、360度魚眼レンズがついているからである。ジェスチャー分析で、ちょっとしたデータを録画したとき「この死角に写ってることがわかれば・・・」と思わされることがよくあるが、魚眼なら、もしかすると解消できるかもしれない。というわけで、一台もとめてみた。
実際に使ってみると、うん、これはなかなかいけそう。
魚眼レンズは付属品で、通常のレンズにはめこんで使う。レンズの周りにカバーがついている。そこにちょっと写り込みがあるので、照明の加減によっては不鮮明な絵になるのが難点だが、ざっくりとしたデータを撮るには問題ない。画像は1280*720。中央は魚眼特有の歪みのために、ちょっと粗くなるので、視線分析までは難しいが、顔の向きや簡単な表情ならわかる。テーブルに置いて、周りの障害物をどければ、多人数会話の全貌がかなりうまくおさまる。単価が安いので(3万円弱)、研究室で一台買って、使えそうならもう何台か買う、という選択肢もあると思う。
もうひとつ、おもしろいのは、通常撮影とは別にフレーム数が倍の60pモードがあること(魚眼では使えないので注意)。手の上げ下ろしの微細なデータを撮るときは威力を発揮しそうだ。
注意点がひとつ。デフォルトでは、「本体設定」の「LUN設定」が「マルチ」になっている。これだと、30分ごとに自動的にムービーが切り分けられる。音楽などを撮るときには困る設定だ。ここを「シングル」にすると、連続ムービーが撮影できる。
少なくともジェスチャー分析にとってはハンディかつパワフルなツールという感じ。
朝、ゆうこさんの運転で彦根から大津へ。途中、休日渋滞で急停車。こわ。
滋賀会館にいったん荷物を置いてから京都芸術センターへ。「未来への素振り」展。南ギャラリーの小山田さんの展示を見て、なかなかアパートに行けていない自分を反省する。もっと人を流通させないとなあ。北ギャラリーの伊達さんの展示は蓄光を使ったもの。文字の浮かび上がらせ方と間が絶妙。こんな読書がありえたのか。
滋賀会館に戻り、野田さんによる会館ツアーに参加。一時間かけて館内のディティールを堪能。
亀田真司、たゆたうは屋上でのライブ・・・と思ったら、たゆたうの雨の歌とともに雨が降り出し、急遽屋内へ移動。そういうあたふたも含めていいライブだった。
夜のライブ場所はホール前の広間に決定。コンクリート壁ですごいリバーヴがかかる。幾通りか声を出してみて、これは生音でいこうと決定。しばらくして中尾さん到着。たゆたう、亀ちゃん、中尾さんとぼくで何曲か合わせる。「りんごのひとりごと」の間奏で、インストの人が歌う、というナイスなアイディアをひろこちゃんが出す。
夜、亀ちゃん、かえる属、たゆたうの順でライブ。最後は全員で三曲ほど。会館のリバーヴのおかげで、いつもと違う声の伸びが出て、いい感じだったのではないかと思う。
吉田秀和「之を楽しむ者に如かず」。よけいな理屈の澱がすっと下りる一冊。
posted at 16:26:59
「之を楽しむ者に如かず」にはピアノとピアニストの話が多い。これを読んでから改めて「永遠の野原」の歌曲の話を読むと、声に添うピアノのことが浮かび上がってくる。
posted at 16:29:28
音遊びの会、堀尾寛太さんのブログ。そうか、こんな風に見えてたのかー。http://kanta.but.jp/wordpress/?p=589
posted at 16:39:51
明日はいよいよ滋賀会館のクロージング。かえる属は夜のライブに。たゆたう、亀ちゃんとも何曲かやる予定です。
posted at 21:38:02
何年かぶりにクリュイタンスの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聞く。あ、これは管の歌だった。ぼおぼおと鳴る管、ピチカートの衣擦れ。
posted at 00:24:03
さて、貯まっている査読を片付けなくては。あと四本。
posted at 16:36:44
風船とつきあってるだけで、時間がどんどん延びていく。場内にいる人はみんな、どんどん風船時間に感染する。急いでいるときも、風船時間が通奏低音になる。遅くあれ、急いでいるときも。
posted at 21:37:58
あ、また風船のこと思い出した。
posted at 21:38:22
あと、去年の旧グッゲンハイム邸のアキビンオーケストラを思い出した。あれも、風船っぽかった。
posted at 21:39:21
速さのレイヤーの下に、遅さがあるといい。グループホームではとくに。ギアを変えるというよりは、鏡の角度を変える感じ。速さの中に顕れている遅さを照らす技法。
posted at 21:42:48
昨日、ギターを置いて無伴奏で歌ったら、あとで「せんせい、フリーダムすぎる!」と女学生に言われました。少女マンガに一歩近づいた?
posted at 11:07:09
1円たりとも端数の許されぬ(らしいが実際のところどうなんだろう)科研の予算残金を使って買い物。ぴったり残高を0円にできるよう、生協には、1円のクリップが置いてある。これからはクリップを大切にしよう。
posted at 17:24:29
科研費の使い切り問題、運営費と合算できる場合もあるらしい。うちの大学でもできないか調べてみよう。 http://twitter.com/hayano/status/9549860480
posted at 17:38:14
会計の方に聞いてみました。我が大学では科研費と一般研究費を合算することは可能、だそうです。ただし、品目によっては問題あり。ともあれ、科研ごとにクリップを買う必要はなさそう。同僚のみなさまのご参考までに。
posted at 17:43:40
京都MUSEホールで、「てんやわんや」企画のライブ。実は勤務先の学生のバンドでもある。あまりにも違いすぎる歌の数々でご迷惑をおかけしてるのではないかと思う。が、歌う以上は止まらないのである。好き放題に歌ったら「せんせい、フリーダムすぎます」とあとで感想をいただいた。よかったよかった。
さっきリハしてきました。派手な登場とともにどよめく共演者たち、長髪なびかせるスターのウィンクに悩殺される乙女続出! のはずが、地味な歌をへたくそなギターで歌うおっさん。あげくの果てにユーミンの真似。とまどいを隠せぬ学生たち。本番が楽しみです。
posted at 16:44:40
昨日の余韻(と酒)をひきずりつつ新幹線で米原へ。なんだか高校生から大学生くらいの若い客がやたら多い。卒業旅行?
posted at 06:45:14
頭の中で鳴っていた曲が店に入ったらかかっていて驚くことがある。昨日の朝のスタバでかかってたスミスはまさにそれ。
posted at 10:46:34
さてばりばり書類書くなり。
posted at 10:47:18
音遊びの会はすばらしかったです。もうエピソードありすぎて書ききれない(もしかしたら日記に書く)。昨日来れなかった人、次回はぜひ。ほんとうに。
posted at 11:46:37
しょ、書類の嵐を通過した(超苦手)・・・。次は音遊びの会の映画のことを書く(〆切大幅遅刻・・・申し訳ない)。
posted at 17:48:04
明日は勤め先の大学の学生バンドたちのライブ。京都MUSEホールにて。18:00開演。ぼくは19:20ごろからソロで30分ほど歌います。かえるさんのTwitter見た、で前売り扱いですと。http://tennyawannya.jimdo.com/live/
posted at 18:30:23
「昆虫と自然」(ニューサイエンス社)4月号は日高敏隆先生追悼号。写真の編集をお手伝いしました。執筆陣には日高研メンバーがずらり。海野和男さんの写真がじんとくる。
posted at 18:52:09
@mint_lee_san 少女マンガとなると、学校名は「○○学園」、さえない教員がステージに上がると長髪をなびかせてグラムロック、頬には★! あと、おどおどする女学生からチラシをとりあげて、ストリートでまき始めるとか・・・
posted at 21:45:07
風船すごいな。風船の動きを見て触るだけでもう、声も音も所作も「風船モード」になった。藤本さんがいつになくやさしい音を吹いたのも、風船モードのせいかも。ミーティングで初めて梅田くんと堀尾さんから「野球」って聞いたときは「???」だったけど。(音遊びの会)
posted at 21:57:38
バーチャルボーイから十数年、ニンテンドー3DS にはちょっと期待してしまう。 http://homepage3.nifty.com/elevator/oldies/interview.html
posted at 22:08:41
ものすごい睡魔きた。
posted at 23:19:33
二日目、会場に着くと、中尾さんが練習をしてた。吹いてるのはサックスではなくトロンボーン。あれ? ということは、今日は藤本さんトリオは全員トロンボーンか。うーん、どうししょう。
開演前のミーティングで梅田くんから、もっと打ちおわってから風船を追う時間を長くしたほうがいい、という意見が出る。次々とバッターが出てしまうと、ミラーボールに当たるまでボールを追ってる、その動きに目が行かなくなる。もっとバッターとバッターの間の時間を長くとりたい、と。また、全部投げ終わったあとのつぶやきはなしにしてもいいんじゃないか、とも。大友さんが、え、ピンマイクでつぶやき拾うの本当に止めていいの?、と、やや異議。確かに昨日のぼそぼそしたつぶやきもよかったしなあ。じゃあ、ぼく(細馬)と中尾さんは、風船が打たれたら、あまりしゃべらずに、成り行きを見守る時間を作るので、そのあいだにつぶやきを聞きましょう、と提案する。
もうひとつ、アリ君から、昨日体育館から外に出たのでちょっとテンションが途切れたのではないか、という指摘。そういえば、昨日の飲み会で、ホールに出ちゃうと物販がほったらかしになっちゃうのが問題と、大友さんも言ってた。いっそ、外に出ずに体育館にとどまるのはどうかということになる。これなら、体育館をそのまま遊園地化できるし、物販にも足が向く。
普通の舞台では考えられないくらい大胆な変更がどんどん決まっていく。ミーティングって重要だなあ。
さて、開演。ぼくと中尾さんとは例によって「野球というよりゴルフ中継のテンション」。風船が打ち上がったら「では、行方を見守りましょう」と言って黙る。ほんとの野球中継なら完全に放送事故である。しかし、これはただの野球中継ではないので、これでいいのだ。昨日よりも、風船を呆けたように眺める時間が生まれた。竿を持って風船を追う大人たちが、だんだんこびとさんに見えてくる。つぶやきが聞こえてくる。いやあ、これはいい。かなりいい勘二。中尾勘二。ぼくら二人も思わず中継役を忘れて風船に見とれてしまう。なんか昨日にも増してドリーミー。
さて、本日の二部でも、藤本、中尾、細馬のトリオ演奏。
ビッグバンドが終わって藤本さんを見たら、すごい汗だくだった。この状態で、トロンボーンを吹きまくるのはしんどそうだ。それで、トリオの最初は深呼吸から始めることにした。
「よろしくおねがいしまーす」とお客さんに挨拶をしてから
「まず、深呼吸をしましょう」。
全員で、すーーーーはーーーーすーーーーはーーーー。
「はい、そのままの感じで、いきましょうか」とトロンボーンを構える。藤本さんも中尾さんも構える(もちろん打ち合わせなし)。ゆっくり吸って吐きながらトロンボーンを吹く。すると、おもしろいことに、藤本さんの音がいつもと違う。一気に吐く音ではなく、ゆっくりと長い音。スライドを少しずつ動かしながら、あまり力を入れずに音程を変えていくと、藤本さんもそれについてくる。中尾さんもぐにゃぐにゃ。三人の音のずれが珍妙に伸び縮みするにょろにょろサウンドに。こ、これはおもろい。
そして、スライドを動かしながら、藤本さんの動きを真似ていくと、今度は藤本さんが先導して両側の二人が追いかける形になってきた。それからこちらが追い越すと、藤本さんもついてくる。演奏で「真似」をしていると、ときどきこういう反転が起こる。次々と反転して、どっちがどっちの真似をしているのかが、わからなくなる。
藤本さんの側にスライドを傾けてみる。と、中尾さんもすぐに察知して藤本さん側に傾ける(中尾さんはほんとにこういう判断がすばやい)。ちょうど藤本さんの正面で三本のスライドがモチでもつくような形になった。にょろにょろ餅つき。最後は藤本さんがぶわっと一発吹いて、終わり。昨日とは全く違うトリオになった。
あとでおかあさんに「優のあんなやさしい音、初めて聞きましたわ」と言われてうれしくなる。
その後、どのセットも昨日とは感じが違う。理治くんの終わり方は二度ともしびれるほどかっこよかったし、友里ちゃんの木琴は周囲の音を拾い上げながらみごとにコントロールされてたし、大生くんが昨日に引き続きいきなりマイクを持って「みなさん!きいてください!」っていうし・・・その他、あまりにたくさんのことがあったのだが、順序立てておぼられない。そのうち、光永くんレポートを見れば思い出すかも。
第三部は、佑佳ちゃんのいまや深遠とも言える踊りに始まり、少しずつ音が足されていく。ここも、ミーティングで、「小さい音の人からちょっとずつ音を足していく感じ」に変更になった箇所。そのまま、体育館の中のパレード。昨日は外に向かって開放的になっていく感じだったが、今日は風船の動きに感染したようになっていった。ほんとは来たお客さんとあれこれ話す時間なのだが、ずっとトロンボーンを吹いていた。
いつ終わったのかわからない終演。
会場の撤収をして、夜は再び近くの中華屋へ。立体写真を撮りまくる。映画音楽の仕事で一次会を抜けてた大友さんが夜中に再び合流してきたのには驚いた。打ち上げへの執念。茄子の漬け物に妙に興奮してナスナス叫んでたら、みんなにゃーにゃーとかナスナスとか言い出した。なすなす言うなす!
いろいろ驚かされる一日だった。明日はまた違う試みをするショゾンです。音遊びの会。まだ当日で来れるらしいからぜひぜひ生でみて下さいな。http://www.3331.jp/schedule/000018.html
posted at 00:02:36
幾多のセッションに参加してきた中尾さんが「あの娘はすごいですよ。もう音楽があふれちゃっていっぱいふりまいてる。一瞬目が合うだけで反応せざるをえない」。佑佳ちゃんの踊りと指揮のこと。ってわけで、本日も音遊びの会@元錬成中学校にぜひ。
posted at 08:17:20
藤本さんの反応の良さに改めて驚いている。昨日、「音遊びの会」で、中尾さんとぼくと三人でやった短い曲(?)には、なんの打ち合わせもなかった。ぼくは最初のひとこと以外、何も決めてなかった。あとは藤本さんが考えて、声を出す時間にまかせていればよかった。
posted at 09:55:17
藤本さんとの曲は、もちろんでたらめに成立したのではなく、森本アリくんと藤本さんとの精密なセッションの積み重ね、藤本さんが毎日つけている詳しい日記、そして中尾さんの洞察力のたまもの。ぼくはそうした、巨人の肩ならぬ、経験の肩に乗っただけ。
posted at 10:04:20
朝、ギターか手ぶらか・・・と考えて、結局トロンボーンを持っていくことにする。
なんとなく選んだんだけど、この選択は演奏をかなり左右する。「音遊びの会」唯一のトロンボーン吹きである藤本さんは、ぼくがトロンボーンを持っていったら「むむ」と思うに違いない。それが、演奏にどう顕れるか。うーん、考えてもわからん。
新幹線でTwitterをチェックする。神戸組の飛行機が欠航との知らせが入ってくる。ありゃま。どうやらなんとか新幹線に乗り換えた模様。朝から危機一髪である。窓の外は米原からずっと白い靄。昨日からの嵐で、黄砂が大量に下りているらしい。
午前10時過ぎ。東京に着くと、思いがけず風は弱く、陽も照っている。人出も多い。なんだ、無問題だ。
会場にはすでに昨日から仕込みをしていた梅田くんや堀尾さん、そしてスタッフの面々。広い体育館で見る風船の印象は、ワークショップとは全く違って、より生き物がかっている。ということは、梅田くんと堀尾さんはさながら「いきものがかり」。中尾さんが「むかーし海外のテレビドラマで、島に閉じ込められた男が逃げようとすると向こうからこういう風船が・・・」。それはプリズナーNo.6でしょう!というと、がははは、と中尾さん。二人でむにゅーと顔を風船に押しつけるポーズ。
メンバーがそろったのは昼過ぎ。もう通しのリハをやる時間はない。大友さんの指示でサウンドチェックをして、いくつかのセットを試して、あとはどうにかなるだろう。
それにしても、梅田くんと堀尾さんの仕組んだ風船は、おもしろい。ただの風船なんだけど、ヘリウムの詰め方がうまいのか、じつにいい大きさ、いい浮き加減なのだ。
大人でも一抱えもある風船。ばかでかいのに、指先にほんの少し力を加えるだけで、上にあがってしまう。そして上昇しきるわけでもなく、ゆっくりと降りてくる。そのあいだ、こちらはぽかんとしているしかない。ぽかんとしている時間が生まれる。風船を仰ぎ、待つ時間があって、降りてきた風船に触れて、また上がっていく風船を仰ぐ。アクションはほんのわずか、ほんの一瞬で、あとは行方を見守る。風船とつきあってるだけで、時間がどんどん延びていく。どんどん風船時間に感染する。急いでいるときも、風船時間が通奏低音になる。風船は音楽も奏でないし、楽器でもない。けれど、風船時間は確実に、こちらの音楽に影響する。遅くあれ、急いでいるときも。
第一部は、この風船を使った野球、という趣向。「音遊び」の会なのに「野球」。謎だ。梅田君の説明を聞いても、全体像が浮かび上がってくるわけではない。「あんまりわあわあ中継してる感じじゃなくて、クールな感じで」と梅田くんが言うので、中尾さんと、「野球ではなく、ゴルフ中継のテンションで」と打ち合わせる。「余計な盛り上げはなしで、目の前のことをただそのまま言うだけ」とも。
中継席に机が置いてあるだけなので、「中継」と書いた張り紙を貼ってみた。そしたら「その、張り紙を作るところから本番でやってくれませんか」と梅田君。なるほど。彼が実験器具を組み立てながら、その組み立てるプロセスも全部みせていく、あの感じなのだろう。
こうなってくると、もはや音楽でも音遊びでもない、のかもしれない。けれど「音楽」か「音遊び」かを問うてもしかたがない。これはたぶん、拍手で始まり、拍手で終わるなにか、なのだ。そして、あらかじめ何が始まるかがわかっているものよりも、何が起こるかわからないものをとりあえず始めてしまうほうが、おもしろいに違いない。
この第一部では、メンバーが次々とバッターボックスに立つので、いわばメンバー紹介を兼ねている。中継では、メンバーの紹介文を読み上げることになっている。おかあさん、おとうさん方から集めた紹介文は、ワープロで打ち出したもの、コピー用紙に本人が書いたもの、リロ&スティッチのレターペーパーにかいたもの、なぜか薬の広告の入ったもの、などなど。紙のバラエティがそのままメンバーのバラエティのようで楽しい。
いざ始まってみると、意外にすいすい進む。アリ君が風船を投げる。いや、投げるというよりは、押し出すというのが近い。バッターが打つ。思いがけない打球の軌跡。拍手。そして次のバッター。これ、ろくにリハしてないんだよな。うまくいってる。
このあと、ピンマイクを使った「つぶやき」タイム。理治くん、翼くん、大生くん、藤本さん(だっけな?)のつぶやきが拡声されて、薄暗がりの中に響く。打ち上げられた風船が舞っている。つぶやきに呼応してミュージシャンが小さな音で演奏。ぼくも中継席でトロンボーンを、ぼす、ぼす。中尾さんは小机の下の棚を叩いてた。
第一部のシメはアリ君、藤本さんのデュオ。ワークショップのときからさらに進化してた。このデュオはすごいな。
第二部は、ビッグバンドがぶちかましたあと、小編成の室内楽がメイン。ぼくが考えねばならないのは、藤本さんと中尾さんとのトリオ。
藤本さんとはこれまで二回やってるけれど、いずれの場合も打ち合わせはなかった。今回も打ち合わせはない。一応トロンボーンを持って出るものの、吹くかどうかはわからない。藤本さんもトロンボーンを握って舞台にあがるけど、さてどうするか。
とりあえず、配置と始め方だけは考えていた。藤本さんが真ん中で左右にぼくと中尾さん。「よろしくおねがいしまーす」とお客さんに挨拶してから、まず、藤本さんに「きのう、晩ご飯なにたべました?」と聞く。藤本さんはもう何年も、各食事で食べたものを詳細にノートに書いていて、それをおかあさんに見せていただいたことがある。だから、食べたものをたずねられたら、きっと藤本さんにはいろいろ言いたいことがあるに違いない。でも、そこからどうするかは、決まってない。
いきなり質問された藤本さんは、ひとつひとつのメニューを、つまりながらも、必死で思い出していく。すらすらでないところ、必死なところがすごくいい。そのことばのタイミングが、もう、ただの答えではなく、歌に近づいている。それで、歌に近づいている口調の一部の音調をなぞって、トロンボーンで吹いてみる(ものすごくへたくそだけど)。すると直後に、藤本さんもトロンボーンで答える。それも、ちょうどぼくが吹いたのと、同じくらいの長さで終わる。驚いた。昔の藤本さんは、一度吹き始めたら、気の済むまで吹き続けることが多かったのだ。この「終わり」の感覚は、新しい。
藤本さんが吹き終えた直後に、中尾さんが最後に、藤本さんの口調を見事にシミュレート。客席から笑い。図らずもトリオ漫才風味。うまくいきすぎて怖いくらい。これ、打ち合わせゼロだったと誰が信じるだろう? すごいよマサルさん。これを今度は「昼ご飯」でやって、終わり。思わぬ展開。
二部は、このあと、ワークショップ形式で、さまざまな組み合わせが試されていく。どの組み合わせも静かな緊張が持続して、すごく濃い内容だった。一個一個論評したいが、もう覚えきれない。光永君の青春の苦悩が爆発するチューンで終わり。光永君、シャウトしたあと飛び降りてた。
三部は、佑佳ちゃんの無伴奏の踊り(かっこいい!)に始まり、ビッグバンドの演奏。風船の舞う中、体育館中を移動する。トロンボーンが二本あるのはいいな。藤本さんが一吹きして、遠くでこちらが答える。こちらが一吹きすると藤本さんが答える。それから体育館を出て、一階のロビーへ。なんだかやたら開放的な気分になって、永井くんの太鼓に合わせてばりばり吹いたりする。いつまでも吹いていたい感じ。
明日もあるのでざっくり片付けて、近くの中華屋で打ち上げ。にゃーにゃー言う。立体写真をいっぱい撮る。
さらに旅館に移動して、男部屋で飲み会。くだらない写真を山ほど撮影する。
新幹線で東京から彦根に戻る。卒業式と謝恩会。卒論生から手作りのアルバムをもらう。ぼくの実験室の滞在時間が長いとしたら、それは学生とつきあう時間の楽しさのおかげ。どうもありがとう。
さて、明日はまた東京。東京は嵐らしい。だいじょうぶかな。「音遊びの会」には何を持っていこう。
朝、中央線の車中で夜の講義の準備。しかし、中央線でフライシャーを見る時代が来るとは思わなかった。
八王子みなみ野の東京工科大学へ。
本日の仕事その1は漫才科研の収録。M1の覇者サンドウィッチマンの漫才とコントを生で体験するという豪華な実験。
朝、大庭さんから来たメールには、なんと数百行にも及ぶ実験の段取りが書かれていて、その綿密さに驚く。どれだけリハーサルしたんだろう。そしてそこには「お二人を舞台袖に(細馬)」といった文字列もある。これだけ複雑な実験の最中、舞台に上がる直前、芸人さんがもっとも緊張する場面にわたくしのようなソコツ者が動いて大丈夫なのであろうか。
あたふたと本番。袖にあがる前の廊下で、伊達さんにヘッドセットをつける役回り。伊達さんが腕を伸ばして構えると、頭の位置がさっと決まって動かない。芸人さんとは、わたくしのような不慣れな者にさえ、こんな風に、体を預けることができるのだな。あの、テレビで何度も拝見している伊達さんのうしろ頭が、いまこちらに全幅の信頼を寄せて、わたしの目の前にある。めがねのつるを少しく持ち上げて、ヘッドセットを耳たぶにかけながら、じんとくる。
じんときたはいいが、マイクの角度がつきすぎて、伊達さんの鼻先や顎先にマイクがぶつかる。かすかに、ふん、と鼻先から息をもらしながらも、けして不快な顔をされない伊達さん。ああ、これはまるでコントのようだ。こんなコントに巻き込んで、すいませんすいませんすいません。
袖にご案内しようとして、マイクテストが終わってないことに気づく。あたふたあたふた。すいませんが、廊下でいまいちどマイクテストを、とお願いすると、富澤さんが狩野英孝の声色で(すげえ似てる)「よろしく!」
そんな裏でのドタバタも舞台の上のお二人は微塵も漏らさない。生で袖から見るとすさまじい迫力。実験側ゆえに、笑い声を立てることはできないが、伊達さんの気遣いや富澤さんの静かな狂気の凄みがぐっと伝わってきた。ことばと動作のタイミングを緻密に組み上げた完璧な話芸。ああ、サンドウィッチマンはすばらしいよ。
そして、多数のビデオカメラとマイクを用いる(4chのEdirolのレコーダーが三台並んでた)複雑な実験を組み立てた、岡本さん、大庭さんはじめ東京工科大学の学生スタッフの皆さんの手際のよさには圧倒された。ひたすら感心することしきり。どっかんどっかん受けていた客席の人々の音声も表情もばっちり記録されている。データのおもしろさは必至。伊達さんの鼻先に報いるべく分析に貢献したい。
無事お客さんを送り出し、サンドウィッチマンのお二人をお見送りしてから、スタッフはさらにミーティング。来年以降の研究進行など。
大学を辞し、中央線でさらにレジュメを作る。琵琶湖線ではときどきPC仕事をしてる人をみかけるが、中央線にはあんまりいないなあ。みんな携帯とかiphoneだ。
夜も更けて、本日の仕事その2。メディア総研で「初期アニメーション講座」。今回はリー・デフォレストとフライシャーの仕事をたどりながら、身体のスペクタクルから口のスペクタクルへと移行する過程として、1920年代史を考える。どうやらアニメーションや映像に詳しい方々が多いらしく、ここぞと思うところでちゃんと「おお」という声があがる。話すのが楽しい。
朝から保留中の成績をがーっと付ける。教務に提出してから東京へ。例によって新幹線のなかでがーっと譜面を書く。
ループラインで、かえる目の単独ライブ。リハ中に宇波くんはギターの弦が切れて、風邪気味だというのに新宿まで買いに走ることに。さらにループラインにはとくに楽屋はないので、客席の前でギター弦を張り替えることに。しかし、失敗をプロセスに読み替えるのは、かえる目の常態、弦の張り替え時間を利用して、プチユーミンメソッド講座にてみなさまのご機嫌をうかがう。
結局、アンコールを含めて23曲(うち半分以上がアルバム未収録)。「愛こそすべて」はかなり珍妙なムード歌謡に仕上がりそうである(木下くんのモナムールな語り付き)。本日の白眉は、「このまま続けたら間違ってしまう」と予感して曲を中断したこと。あぶなく間違うところだった。よかったよかった。やたら長いMCとさまざまな怪奇現象が入り交じる夜とあいなった。と、こんなんでライブ感が伝わってるでしょうか。みなさんおつかれさまでした。
書類仕事。夜、京都へ。urbanguildでふいごと薄花葉っぱ。ふいごの三人が入っても薄花葉っぱのバランスは崩れない。歌の反応系。
出場者の面々と楽しく飲む。結局午前二時頃まで。
朝、グループホームの新理事とお話。それから琵琶湖線に乗って高島まで。会合に少し間があるので、駅でレンタサイクルを借りて白髭神社まで。湖に立つ鳥居から神社にいたる導線は、いまでは国道で分断されて、かつての面影はない。それでも、往時の神さびた感じをトレースすることはできた。
高島で回想法プロジェクトの総括。
帰りに上田くんと車で国道を通るとき、「昼にちょっと白髭神社に行ったよ」というと、「車で行きながら言うのもおかしいんですが」と上田くんは前置きしてから「この道で分断されてちょっと風情がなくなりましたよね」と言う。やっぱり上田くんもそう思うんだな。彼が中心に作っているふるさと絵屏風には、八坂をはじめ、浜と集落とが地続きになっている生活が数多く描かれている。湖岸道路がなかった頃の浜が、どれほど人々にとって近しいものだったか。それが、道路わきに立つ白髭神社の巨大な鳥居から忍ばれる。
夕方に大学着。MBSのニュース番組でその上田くんのふるさと絵屏風プロジェクトが登場。一緒に見て解散。
朝から科研プロジェクトの総括。中村さん、吉村さん、城さんと。それぞれが持ち寄ったデータを見ながらディスカッション。特にボール遊びのシーンにおもしろい問題が埋め込まれているのを発見したのが大きい。楽しみなテーマだ。夜は串カツを食いながらさらに話。
暖かい日吉。道ばたにオオイヌノフグリが咲いている。こちらは春だな。
社会言語科学会二日目。いささか腹の調子がおかしく、低空飛行。終了後、いつものメンバーで飲み会(なぜか腹は復調)。榎本さんから「この前の研究会で細馬さんが『いろいろいいたいんだけどとりあえず』と言って言い逃した『いろいろ』ってなんだったんですか?」と問われて、まったく思い出せない。いろいろ言いたいときはその場で言ったほうがよい、ということか。
新幹線の中で岩佐東一郎「書痴半代記」(またまたウェッジ文庫)。大正期のガリ版同人誌黎明期。
「鉄のヤスリの上でコツコツと蠟を引いた原紙へ鉄筆で書くのだから、冬などは手が冷えて閉口した」。ガリ版の季節感。「ガリ版で『早苗』という雑誌をつくっていたのもこの年だ。『文章世界』『秀才文壇』『中央文学』なども読んでいる。浅草電気館でチャップリンの『犬の生活』を七月に見ていた。」チャップリンが出てくるところに、横並びではない、時代の空気が感じられる。
新幹線で『書痴半代記」(岩佐東一郎/ウェッジ文庫)。「鉄のヤスリの上でコツコツと蠟を引いた原紙へ鉄筆で書くのだから、冬などは手が冷えて閉口した」。ガリ版の季節感。
posted at 20:57:38
書痴半代記は、大正期に十代だった人の投書家感覚、本好きの感覚が忍ばれて楽しい。「大正期」というところがミソ。
posted at 21:00:01
ガリ版と同人誌、の初期だよね。大正期。
posted at 21:01:05
「ガリ版で『早苗』という雑誌をつくっていたのもこの年だ。『文章世界』『秀才文壇』『中央文学』なども読んでいる。浅草電気館でチャップリンの『犬の生活』を七月に見ていた。」(書痴半代記)チャップリンが出てくるところに、横並びではない、時代の空気。
posted at 23:08:07
などと書いている米原の普通待ちの寒さよ。
posted at 23:08:32
「ええラムネすぽんと抜くや泡立つて」(岩佐東一郎)というのもいい句だな。「ええラムネ」という売り文句の引用の時刻から、すぽんと抜ける時刻への跳躍。疎開で紙ものの資料を失ったくだりに添えられた句。
posted at 23:12:08
朝、ポスターをA4で打ち出したところまででタイムアップ。いつもぎりぎりまで仕事を引き延ばす癖をほんとーになんとかしたいのだが。新幹線の中でぐったり寝る。ヘッドホンから、渚にて「よすが」。この世じゃないみたいな夢。
日吉についてから、コンビニでA4で打ったものをA3に拡大コピー。タイトルページだけ単色カラーコピー。で、泥縄ポスターの出来上がり。
慶応日吉キャンパスで社会言語科学会一日目。できたてのきれいな校舎。口頭発表を聞き、理事会に出て、ポスターをやって、講演を聞いて。杉浦秀行さんの極性反転疑問文(東京の若い人が「それって、少なくない?」というときの、あのイントネーション)の発表をきいて、あべひろしの「ちょいウザ」の理由が判った気に。「・・・ない?」は、じつは疑問文ではなく「評価」であり、しかも、自分にそれを言うだけの経験や知識があるという「認識的権利」を主張している。だから、ピン芸人のあべひろしが、相手のあいづちもなく「・・・ない?」というと、「何様のつもりでそのような評価をするのか?」という「ちょいウザ」な感じが出るのである。そう考えると、あらためて、あべひろしの言語感覚はすごいな(杉浦さんの発表はもっと手堅いもので、ワタシが妄想を拡大しました)。
二次会で、山本さんの引用研究の話を聞いてムービーデータを見せ合ううちに、引用と真似の境目、という世迷いごとを思いつく。
服部くん宅へ。例によってクラシック三昧。そして酔っぱらったとどのつまりはこれまた例の如く、バルトークのSQ。
夜、久しぶりにジョアン・ジルベルトのコピーをしていると、あらためていままで気づかなかった指の押さえ方に気づく。弾きはじめの頃は、「こんなに跳躍する指使いをなんでするのか?」と思ってたが、いまは、「こんな跳躍をすればこういう経路が!」という感じ。左指が見つける隘路。
以前から好きだったキンクスの「waterloo sunset」を日本語にできそうな気がして試してみる。
この放送をダウンロードする <
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さて、ちょっと寝よう。起きたらポスターを作るショゾン。今日は暖かくなるらしいね。
posted at 05:22:49
core of bells 1stをかけたら楽しく禍々しすぎ。せっかく起きたのにまた夢の中。ジャケットもすばらしいです。で、仕事にならん!
posted at 12:22:35
あかん、core of bells聴いてると、「思いついたことをダイレクトに歌にする」病が。まさにこの一日がろくでもないPrecious Time Medleyに。
posted at 12:50:59
自分でも忘れてた、もう一つの「見届ける」論。豊饒の海から静岡、転校生へ。 2008年の沼:374 生きのびてしまうこと、観察と報告 375,376も。 http://www.12kai.com/numa/numa374.mp3
posted at 15:51:09
一休みして、ギターショップでチューナー買ってきた。ひこにゃんピックを売るギター屋も、ラーメンにっこうも徒歩5分圏内。なかなかよいご近所環境。
posted at 17:02:16
彦根ベルロード沿いは、ラーメンにっこうに続いて麺屋ジョニーも開店。以前からある「うま屋」も含めて、あたかも京都高野のような激戦区になってきた。
posted at 17:08:41
明日の発表ポスターを作り始めて、結局徹夜。
懸案だった「セヴィリアの理髪師」論をがーっと書いてみる。ボーマルシェの劇作版のkindleバージョンがあったのでそちらも読んでみる。発見多し。でも書きながら聞いてるのはドビュッシー。
昔、レコードで何度もかけた曲を聴くと、幻のワウフラッタが聞こえる。ピアノの残響がふらふらと音程を波打ってるのじゃないか。結局音はまっすぐ減衰する。綱渡りのようなまっすぐさで。
posted at 03:21:45
半日ドビュッシーばかりかけたあとにトッド・ラングレンかけたらタイムマシンで現代にきたサムライの気分に。
posted at 14:17:11
さらに立ち上がりデータを見る。夜、七尾旅人出演のdommune。ustreamの窓の小ささはいいな。これが大画面になったときにどんな感じなんだろう。テレビになっちゃうんだろうか。
いわしのみりん干しを食っている最中に、「腐ってる!」としか思えぬ強烈なアンモニア臭。口内一杯に広がったときには飲み込んでいた。あれからはや三時間。これから先どうなる。どきどき。
posted at 01:15:45
な、なんともなかったです>いわし。いわし、って書くと猫みたいだな。
posted at 09:18:44
アンジェラ・ヒューイットが来ますね。この人のラヴェル全集とゴールドベルクの演奏はすごくいいので楽しみ。
posted at 09:55:27
アンプにつないだ。画面ちっちゃいけど音は税関サイズ。 (#dommune live at http://ustre.am/dhFr)
posted at 20:29:03
森さんに来てもらい、回想法の会話をELANにおこしてもらう。週末の発表のために立ち上がりデータを見なおす。気づかなかった点いろいろ。
アートは、見届ける人によってアートになる、という話を以前書いた。 http://www.12kai.com/200811.html#20081107 が、あれはこういうことだったのか、と、内田樹さんのラカン引用を見て腑に落ちた。それは・・・
posted at 20:28:50
「豚のブーブーという鳴き声がパロールになるのは、その鳴き声が何を信じさせようとしているのだろうかという問いを、誰かが立てる時だけです。パロールは、誰かがそれをパロールとして信じる正にその程度に応じてパロールなのです。」(ラカン「フロイトの技法論」)
posted at 20:29:44
いや、アーティスト(だけ)が豚だっていう話じゃないですよ。わたしもまた豚であり、豚を聞く。
posted at 20:31:04
今日のばんごはん、豚肉炒めは旨かった。
posted at 20:33:45
舞鶴から彦根へ。綿谷さんに来てもらって、科研の予算まとめ。会議や卒業判定の相談。
東京から舞鶴へは約五時間。砂連尾理さん出演・構成による「とつとつダンス」。老人ホームのお年寄りと踊るのだという。ぼくは終演後の座談会に呼ばれていくのだけれど、どんなことになるのかまるで想像がつかない。
二時過ぎ、会場に着く。いまなら一度目の公演が始まったばかりのはず。階段を駆け上がって、さて受付に、と思ったら、ぴん、という涼しい音がこだましているのに気づいて急に足が止まった。階段の上、二階全体がすでに踊りの舞台らしく、のぞきこむと、伊達さんがウクレレを弾いていた。
フロアの真ん中に、客席が背中合わせに四列。その客席をはさむように、片方には砂連尾理さんがいて、もう片方にはご婦人が一人。砂連尾さんが彼女を、名前で呼ぶ。ウクレレが鳴っている。彼女は椅子から立ち、ゆっくりとした足どりで前に進む。子供が彼女の背中にひらがなのようなものを書く。彼女もまた、子供の背中にひらがなのようなものを書く。今度は濱寺さんが出てきて、○○さんと互いにさしのべ、たがいに真似るような踊り。指先がからむ動作は、触れることと真似ることの間で揺れる。
みゆきさん、と呼ばれるご婦人が、もう一人のこどもに伴われてやってくる。その伴われ方や、所在ない立ち姿に、みゆきさんらしさが出ていると思う。らしさも何も、いま初めて会う人なのだが。
子供が元気に場内を何周もする間に、二人のご婦人は少しずつ移動する。その少しずつの移動が、遅さを感じさせないのは、動きに、子供とは異なる緊張が込められているからなのだろう。
ダンス、といっても、振付のある踊りとは違う。お年寄りの、ゆっくりではあるが生々しい動きにあえてつきあおうとする態度がよく伝わってくる。演者の目線がリアルなので、つい、その目線の方向を追ってしまう。目線の中に、見る者も取り込まれる。静かな緊張をたたえた時間。
四時から二度目の公演を見たあと座談会。動きのこと、視線のことをあれこれ話す。砂連尾理さんのここまでに至る試みがいろいろ聞けて面白かった。西川勝さん、古後奈緒子さん、そして特養の施設長である淡路由紀子さんの話もおもしろく。なんとなく立ち去りがたい感じで、日帰りの予定を泊まりに変更して打ち上げに。
VNV(ヴァーバル・ノンヴァーバル研究会)@NII。視線問題についてあれこれ考える。とくに、視線とアドレスとの関係について。アドレス性の問題は、視線だけでなく、頭部の動きや表情の動きなど、マルチモードが一気に動くタイミングを抽出する、と考えた方がよいような気がする。おそらく人の注意は、ある単一の要素が動くことよりも、いくつかのモードが「そろって動く」ことに惹かれやすいのではないか。そして、そのほうが工学的にも、処理しやすいのでは。
宿に戻って原稿。この際なのでカルメンの手紙場面についても書く。これまたリブレットと照らし合わせつつ。「オペラ対訳ライブラリー」の訳はエーゲ版を改訂したもので、レチタティーヴォがけっこう長く、おもしろい。ネットで出回っている版は、グランド・オペラ風で、台詞がかなり省略されている。
さて、ビールとポテチ買ってきて原稿書くか。
posted at 00:12:04
ビールとポテチ買ってきた。ぷし。
posted at 00:25:58
わかった。ビールとポテチを飲み食べしているあいだは、原稿は書けない。
posted at 00:40:27
ビールとポテチを思い立ってから34分は買って食って飲んでただけだとTwitterが教えてくれた。ありがとありがと。
posted at 00:46:15
意図があるというよりは、意図を読み取らせやすい行動がある、と考えてみる。たとえば複数のモダリティが協調的にタイミングを合わせて動くときに行為は表象化され「わざと」感が出る。目を見開き、眉を上げ、眼球が上にいくことで非同意を表す、という風に。
posted at 22:27:55
意図的行為は意識的かどうか。トマセロの議論では、意図的行為のほうが意識から滑り落ち、失敗が前景化する。しかし、通常は、意図的行為のほうが意識的で、意図しない行為のほうが意識から滑り落ちると思われている。意識なき意図。未必の故意とは自然現象なのかも。
posted at 22:31:58
会議いろいろ。夜、東京へ。菊池・大谷本の校正。
今日も書類や採点で暮れた。夜、ロータスで夕食。
朝、昨日買ってきた三色のかきもちを積んで、ひしもちがわりに。巨大。久しぶりにオペラ原稿。今回はエフゲニー・オネーギン。岩波文庫版や講談社文藝文庫版に、リブレット。昔のオペラのリブレット(オケ版、ピアノ版など)は、ネットであちこち探せばかなり手に入る。昔なら、大きな楽譜屋に行かなければ手に入らなかったのだから、ずいぶんありがたい。
リブレットには、ちょっとした所作の指定もあるので、そのタイミングも読み込んでいく。すると、出回っているDVDの演出がリブレットをいかに解釈しているかがよくわかる。ロシア語はまるで読めないので、ドイツ語付きのやつを辞書と首っ引きで。
午前中、高月町へ。渡岸寺で十一面観音を見る。後ろに回り込むことができる、珍しい置かれ方。腰への体重のかかり方がすばらしく、後ろから見ながらちょっと真似てみる。暴悪大笑面がこちらを向いている。後頭部から目が生えてきそうだ。
本堂の菩薩も吸い込まれそうだった。浅井町歴史民俗資料館で初三郎展。滋賀のパノラマいろいろ。
資料館には、動く人形もあるのだが、これが等身大で、かなりインパクトがある。ちょっと怖い。笑い飯の「奈良歴史民俗博物館」が現実になった感じ。
帰って採点。
会議会議会議。忙しい三月の始まり。