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▼午後から名古屋へ。彦根というのは微妙な位置にあって、JRの値段で比べると、大阪よりも名古屋のほうが近い。中日新聞や中日スポーツが喫茶店に置いてあることも多い。しかし、米原・大垣での接続が必ずしもよくないので、名古屋−彦根間をスムーズに行き来できる便は少ない。
▼JRの中で、エクスプレスオランダ語。外国語会話の本の例文って変なのが多いのだが、このテキストも微妙にヘンだ。たとえば第2課。
■ A:私はここで働いています。 彼は私達の部門の長です。 彼女は秘書です。彼らはとてもよく働きます。 あなた方もまたよく働きますね。そうでしょう? B:ええ、私達は朝の9時から晩の8時まで働きます。 A:日本人は皆、勤勉ですね。 B:いいえ、何人かの日本人は怠け者です。 たとえば私です。私はとても怠け者です。
(「エクスプレスオランダ語」桜井隆/白水社)
▼「朝の9時から晩の8時まで働きます」といっておきながらなぜ「私はとても怠け者です」なのか。勤勉ですねと云われて意地になっているのか。
■ A:あなたはオランダ語が上手ですね。 B:おせじをありがとう。 A:おせじではありませんよ。 B:私はオランダ語がそんなにうまくありません。 誰も私にことばを教えてくれません。 A:それでは私があなたにオランダ語を教えます。 B:ああ、そうですか。いつレッスンを始めますか? A:今すぐに。 B:今すぐですって? A:ええ、なぜいけませんか。
▼なぜいけませんかといわれても困る。まあ英語のWhy Don't youとおなじでほんとは軽い勧誘なんだろうけど、直訳されるとこわい。▼「おせじではありませんよ」というのがまた、どこか強迫めいている。こう返されると「おせじをありがとう」ということばがいかにもうかつに感じられる。このオランダ語初心者らしきBは、ことばを発するたびにAから押しの強い応えを返され、うかつ地獄にはまっていく。あぶないなあ。このままオランダ語の教えなんか受けたりしたら、BはそのうちAに苛まされて川に飛び込むはめになるのではないか。▼この種の1mg低刺激の強迫が、テキストのいたるところに散りばめられている。ひとつひとつはささいな刺激なのだが、繰り返し唱えることで、じわじわと真綿で首をしめられるように強迫の力がしみてくる。なんだかカフカの主人公にでもなったような気がしてくる。
■地下鉄今池で降りてライブの時間まで近所を探索。なにげに入ったP-GUNという中古CD屋がけっこうおもしろい品揃えで物欲爆発。シネマテークのロシア特集も楽しそうだし、飲み屋はあちこちあるし、ええやん今池。
▼TOKUZOでPURIの演奏。若々しい。あとで聞いたら4人とも30前後らしいが、とてもそうは見えない。大衆演劇の若手花形のような色気と華がある。モテるだろうなあ、この4人。叩き破るかのようなチャンゴも威勢がよくていいけど管弦のびやあっと神破るような演奏がよかった。とくに、名前は知らないが細い竹のような二枚リード。ちょっとした息で倍音に入れ替わってしまうのを逆手にとって、壊れたコブシが鳴っていた。ブロウできない限られた音量変化がかえって緊張を生む。▼最後に一人の頭の後ろで3人がケンガリを小さく2/3拍子で叩くシーンがあったのだけど、それがいかにもマッサージパーラーで頭をいじられているように見えた。▼そのケンガリをミュートしたときに音ががさっと途切れてしまうのが残念。ここいらは師匠格であるサムルノリの方がうまいと思った。たぶん、音像が確定するのを聞きとどけるぎりぎりのタイミングが違うのだ。サムルノリを聞いたのはもう10年以上前だけど、あのケンガリの余韻以下の残響ぐあいにはトリハダが立ったもんだ。
▼帰りの電車の中でオランダ語。MDにカセットの内容を落としたのだが、好きなところにマークがつけられるので便利。1から100までの数の表現をリピート再生。ひつじを数えるがごとし。
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