- 20000402
- おとついの話の続きを朔太郎的に考えてみる。
「You've got a friend in me」にあって、「I am your friend」という表現にはないもの、それはクエストだ。「You」のクエストが生じ、その目標が「got a friend」であることが明らかになり、その終着点に「me」が君臨する。「You've got a friend in me」という短い一文は「You」が「me」に至る、クエストなのだ。 だから、「ぼくがついてるぜ」と訳せば、意味は合っているけれども、クエストは生じない。「ぼく」という結論が先に出ているからだ。むしろ語順から言えば「君にはいるだろ、ぼくが」。
やはり友達を歌った有名な歌に、キャロル・キングの「You' ve got a friend」がある。その歌の中で、キャロル・キングは切々と「You」の悩みを歌い上げ、「I」の行為を歌い上げ、「Yes, I will」と約束したあとで、「You've got a friend」としめくくる。だから、キャロル・キングの「You've got a friend(君の友達)」というフレーズは、「I(私)」のぬくもりで包まれている。 いっぽう、ランディ・ニューマンは歌の冒頭から「You've got a friend」と(そこまではキャロル・キングの一フレーズのように)始めておいて、落ちをつけるようにさらりと「in me」を付け加える。「in me」には、クエストの終わりの虚脱感、たどりついたらただの煙、のような手応えのなさが漂う。そして、煙が晴れたあとに小さな石ころが落ちているのを見つけるように、「me」をそこに見いだす。You've found a friend in Jesus. そこには狡猾で非情なカミサマのかわりに、狡猾で卑小な私がいる。
人間いうたかて、なんでもあれへん、わしにはどうでもええやっちゃ ちんけなサボテンの花の方がまだマシや しょうもないユッカの木の方がまだマシや ほんな砂漠を何追い回しとんねん わしがそこにおりてくる思とんのかいな かわいいやっちゃな、人間は
「God's song」 by Randy Newman (1972)
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