- 19990410
- ▼京都の浮世絵屋さんへ。うわあ、この前買った絵が半値以下でしかもめちゃくちゃ状態いい。そして明らかにぼくのために取っておいていただいたものだ。もちろん買います。ダブっても買う。この絵を二枚持ってる奴は世界ひろしと言えどもぼくしかいまい。▼ここへは買いに来るというよりいつもご主人の話を聞きに来る。気がつくと二、三時間がすぐ。▼あの○○博物館の表に飾ってあるあれね、復元したやつでしたけど、よろしおした。そらようつくってありましてん。けどね。この前行ったら、あれ、と思いましてね。もう時代が見えまへんねん。最初はこっちの目が狂うたんかなあ思うたんですけどね、やっぱり何年か経って色とか落ちてきたんですね。ずうっと照明とかこう当ててますし。作ったときは、いまの塗料で、昔のにうまいこと合わせてきっちり塗り直してあったんですけどね。何年か経つともうずれてきてますねん。不思議なもんですね。▼虫はね、とりあえず紙でこうして包んでビニルでぴしって閉じて防虫剤入れといたらまあ大丈夫ですわ。でもね、それがむかし、わたし歌麿の「むしえらび」いうのん手に入れましてね、歌麿でこんなでっしゃろ、もううれしゅうてうれしゅうて、それをきちっとビニル袋に入れて、虫よけも入れて、おいときましてん。それでまあ何年か見んとね、ふっと出したら、だーっとこう虫がくっとるんですわ。もう情けのうて情けのうてね、がくーっとなりましたわ。あれ、卵がついとったんですね。ほいで虫よけが切れたころになって孵ってだーっと食いよりましてんや。▼こういう硬い紙やと虫食いませんねん。そやけどこれは湿気すいませんねん。奉書やったらね、やわらかいですけど湿気すいます、まあ一長一短ですな。こういう三枚続はほんまは離れてるほうがええんですけどね、これは糊づけしたあるからちょっと安いんですわ。これ、どうしてもいわはるんやったらちょっとずつはがさはったらええですけど、どうしても湿気使いますでしょ、そしたらね、ここの赤が泣っきょるんですわ。こういう色はすぐにじみます。▼もうずいぶん前にね、○○いう人の蔵から画帳が出てきまして、それの中に春信が二枚と大津絵が三枚とそれから瓦版とかがざーっと貼ってあるのんに役者のサインとかが付いてますねん。いま考えたらそれまるまるとっといたら良かったんですけどね、そんときはもう春信と大津絵だけあったらええわ、とにかくこれとっとこ思うてばらばらにしましてん。もったいないことしました。あれまるまるあったらね、あれごと資料にできたんですけど。それが大津絵とかもう、ぴしーっときれいなんでね、手が切れそうなやつで、○○大の○○先生に見せたら、これはちゃうて、あとから足したもんや、こんなきれいなはずあれへん、とかいわはるんですよ。で結局なんやかんやでいろんな人からこれはだいじょうぶ言うてもろてやっと納得していただいたんですけどね、難しいもんですな。ちょっとくらい古い感じがした方が、やっぱり時代が見えるんですな。
▼拾得でふちがみとふなと with 千野秀一+大熊亘。ええやん、ふちがみとふなと。ブレヒトもよかったけど、オリジナルの曲がいいんだ。いや、もう最近歌の歌詞とか聞いてもぱっと忘れるけど、「仕事」っていうことばの使い方がとってもよかったです。お金を貯めて仕事に行こう、とか。食べることにすごく近い仕事。ややこしいもんがその間に入らない。千野さんはごりごり弾いてて、拾得の古いアップライトがホンキートークな音色でひいひい言ってた。
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