DVD版『この世界の片隅に』オーディオ・コメンタリ/キャスト編、目鱗だらけ

 DVD版『この世界の片隅に』、オーディオ・コメンタリ/キャスト編 出演:片渕須直(監督)・尾身美詞(黒村径子役)・潘めぐみ(浦野すみ役)・新谷真弓(北條サン役)がもうもう楽しく、発見が多い。物語の中に声で入り込んだ方々の視点は実に新鮮。

 たとえば駅員さんの「呉」のイントネーションについて、駅員さんらしさをとるか地元らしさをとるか。あるいは婚礼の日のキセノの「『だいじょうぶかいね』のカンペキさたるや!」とか(そうそう、津田真澄さんの突き放した広島弁は実にかっこいい)。あるいはあるいは干し柿を食べる音に対して「ちょっと干し柿食べたくなりますよねー」など。そしてもちろん、尾身さん、潘さん、新谷さんご自身の声の当て方や方言の問題、録音の過程、細かいガヤの声にいたるまで…おっと、このままだと全部書いてしまいそうなので、あとはDVDで確かめてみて下さい。

ユリイカ「蓮實重彦」特集を読みながら

あ、ここもここも、とメモを取り、かつ一方で吉増剛造の自伝にインスピレーションを得ているというのは節操がないにもほどがあるのだが、そうなってしまう。この二人は全くことばに対する感性というものが違っているし、戦後の捉え方も違っているけれど、それを、相容れぬ思想の違いというよりは、人の来歴の違いと考えている。ユリイカの「蓮實重彦」特集を読みながら。島尾敏雄は正直長すぎて過去に何度もあきらめた。安岡章太郎の正直さには感じ入るところがあった。安岡章太郎はなんとか読み通すことがなんとかできる。しかし、実をいえば詩だけでも頭の中が音でいっぱいになってしまうのだ。