DVD版『この世界の片隅に』オーディオ・コメンタリ/キャスト編、目鱗だらけ

 DVD版『この世界の片隅に』、オーディオ・コメンタリ/キャスト編 出演:片渕須直(監督)・尾身美詞(黒村径子役)・潘めぐみ(浦野すみ役)・新谷真弓(北條サン役)がもうもう楽しく、発見が多い。物語の中に声で入り込んだ方々の視点は実に新鮮。

 たとえば駅員さんの「呉」のイントネーションについて、駅員さんらしさをとるか地元らしさをとるか。あるいは婚礼の日のキセノの「『だいじょうぶかいね』のカンペキさたるや!」とか(そうそう、津田真澄さんの突き放した広島弁は実にかっこいい)。あるいはあるいは干し柿を食べる音に対して「ちょっと干し柿食べたくなりますよねー」など。そしてもちろん、尾身さん、潘さん、新谷さんご自身の声の当て方や方言の問題、録音の過程、細かいガヤの声にいたるまで…おっと、このままだと全部書いてしまいそうなので、あとはDVDで確かめてみて下さい。

「この世界の片隅に」Blu-ray版を観る

 仕事場に届くようにしていたので、発売日から少し遅れていまごろ見ている「この世界の片隅に」Blu-ray版。まず14分のメイキングディスクから見始めたのだが、この14分で泣かされるとは思わなかった。

 本編について。画面の大きさ、誰かと見ることがもたらす感覚、離れたスピーカーから鳴る音など、劇場には劇場の、固有の体験があって、それと自室のモニターで見る体験は比べるべくもない。

 とは言え、間近なスピーカーから鳴る音は、音量は小さいものの細部がよく響き、これはこれで楽しい。たとえばすずの婚礼のあと、父母が帰り際に重ねるように声をかけるところで、劇場では二人の言っている内容をはっきり聞き分けるのは難しかったけれど、自室ではそれが分離して聞こえるのでちょっと驚いた。他にも、こんなところでこんな音がと、今まで気づかなかった音に気づかされた。

 画角が劇場より小さいせいか、全体から来る印象が少し違う。たとえば、波のうさぎの、松葉が風にあおられて、あちこちでぱたぱたと動く場面。あそこは劇場だと、江波山の雰囲気を味わうような大きさを感じるのだが、モニタだと、松葉や地面の草があちこちで、まるでのちに描かれるであろう波を予兆し、見ているこちらに合図を送っているかのような愛らしさが出る。なんというか、松葉のひとつひとつの揺れから、それが人によって描かれた感じが発せられており、挨拶をされているような気になるのだ。波のうさぎの一匹一匹からもそんな感じがした。もしかしたら、このモニタがちょうど人の描く画面のサイズに見合っているからなのかもしれない。

 このディスクでは、こんな風にあちこちの場面で印象が新しくなる。すでに劇場では10回観ているのだが、なんというか、新鮮な体験だった。しばらくして劇場に行ったなら、劇場の印象のほうもまた変わるかもしれない。

 特典映像の方はまた改めて時間のあるときに。