海に落ちた友人と弁当(父のノートから)

 油かすが大半の飯や、塩水炊きの魚や玉ネギのおかずになって来た弁当も、艦船工事に出向いている工員さん達のエネルギー源…少なくとも空腹癒やしのお貴重な食糧であった。

 アルマイトのおかず箱、弁当箱を複数人数分、運搬用木箱に詰めて艦船の工員さんに届けるのも勤労学生徒の仕事だった。通船で或空母のタラップに接近、友人が運搬箱を持ってタラップと船端の両方に足をかけた時、波で船が離れ始め、友人は足を拡げざるを得ず、限界が来て弁当と共に海へドボン、友人は助けたが弁当はユラユラと沈んで行った。

細馬芳博(昭和4年生)のノートから