水と水兵と先輩(父のノートから)

 確か空母準鷹に行った時の事だった。

 工員さんから「おい水筒に水を汲んで来いといて呉れ」と頼まれ、水汲場を探して行くと沢山の水兵さん達が水汲みに来ていて、一寸水をこぼすと、傍の上官から「水一滴の大切さが分からんのかー!!」と竹で叩かれている。後でビビリ乍ら待っていると横から「何だ、お前呉一中の生徒カー!!」と声がする。「こんな所で何をしとる、一寸来い」と士官室に呼ばれ、「オイッ、これに冷却水を汲んで来てやれ」と先輩の士官の計らいに会って嬉しく、水兵さんが可哀そうだった。

細馬芳博(昭和4年生)のノートから