Chuck E’s in Love (リッキー・リー・ジョーンズ「恋するチャック」)

どうしてもうしないの? ぶらぶらとか
さそってみても
どうして消しちゃうのTV?
で部屋に入るなってもう
行こうよ行こう 
みんなでさそっても
へい、誘惑はだめっぽい かわっちゃったんだ

あぜん、すらすらしゃべってんじゃんいつもの
あのど、どもったりもなしで
ほんとほんと
なんかさまになってる かっこつけた身のこなしで
どこいったいつものぼろぼろジーンズ
健全、なんなんだなんかこざっぱりしちゃってキミ
だって

チャッキーは恋してる
チャッキーは恋してるよ
チャッキーは恋してる
チャッキーは

ああもう信じない みんなが言っても 
わたしもう自分で確かめる
いないなあ?
いないよビリヤード
いないなあ?
いないよドラッグストア
いないなあ?
もうここにはこないそうおもう

ほんとはね 知ってんだ
すわってたんだそこのうしろあの店で
もう彼がなにたくらんでてもいいけど
なにかの病気じゃなきゃいいけど
相手は誰? あそこのこかな?
あぜん、櫛まで使ってんじゃない?
あのこかな 名前は何?
もう前みたいにはつきあえない
でもそのこじゃない
しってるもの
だってチャッキーがほれてるのはこれうたってるだれかさん
だっちゅうの

チャッキーは恋してる
チャッキーは恋してるしてるしてるしてる
チャッキーは恋してるよ わたしに

(試訳 細馬)


 リッキー・リー・ジョーンズの「恋するチャック」。いろんな訳し方が可能だと思うが、歌えるように訳してみた(といってもこれを歌う人がいるとも思えないが)。

 最初はところどころに「we」が入っており、チャック E.に対する仲間の噂話に聞こえる。It’s true, it’s true というのも、いかにも別の仲間が話に割って入る感じにもきこえる。

I don’t believe what you’re saying to me
This is something I gotta see.

 というところで、噂話は収束して、中の一人が噂を確かめようとブルースコードの抜き足差し足であちこちをこっそり覗いていくが、チャックは見つからない。この一人は、語り手とは別人のようでもあるし、語り手がしらばっくれて探偵ごっこをしているようでもある。

 そこからまた歌は噂話となるのだが、「でもそのこじゃない But that’s not her 」とひときわ声が高くなったところでいよいよご本人から種明かし。

 声は語呂を楽しみながら次々と語りを変え、まさに噂そのものになってから、最後は一人の語り手へと歌を預ける。楽しい多声の歌。