ペドロ・コスタ「ヴィタリナ」

「ヴィタリナ」を見て何度も眠りに落ちた。闇から顕れる映画なのに、闇に塗り込められていくようだった。とにかく視認するのがワンショットワンショットとても時間がかかって、何が写ってるんだろう、それはなに?それはどこ?闇から輪郭、闇から面が浮き出してきてようやくその闇に慣れた頃には、あるいはその闇に慣れようとして眠りに落ちた頃にはもう次のショットになっている。そうやって何度も闇に塗り込められていく。懺悔するときも闇、懺悔する顔がどこにあるのか格子がどこにあるのか、そしてわたしは格子のこちら側にいるのか映画館の闇にいるのか、そう思う間に静かで訥々とした告解の時間が過ぎていく。闇から何度も空間を見いだし続けて、ビタミンAを使い果たして、ユーロスペースを出ると、渋谷は隅々まで明るくて、向こうにお茶づけ海苔の看板が見えて、このやたらと明るい街はどうかしてるんじゃないかと思う。

(2020.9.28 センター街を歩きながら吹き込んだものを編集)