わろてんかがわからない

 もう「わろてんか」について真面目に考えないほうがいいとは思っているのだが、つい筋のつじつまを追い始めてしまったので、書き留めておく。

 先週末の話。亡くなった兄の論文は、これからは「この日本でしかできない新しい薬を作る」という主旨であり、栞はその「本当の新しい挑戦」に感銘して出資を申し出たのではなかったか。だから藤岡家は、てっきり新薬開発の研究所でも作り始めるのかと思っていた。ところが今日見たら、薬種問屋は洋薬の専門店となっており、父がニコニコ笑っている。

 それ、兄の夢やのうて父の夢や!

 先週末の話に戻るが、どうやらこの店は薬種問屋だというのに、明治37,8年に大量の戦没者や病死者を出した日露戦争など関係なかったみたいだし、征露丸だの毒滅だの仁丹だのの話も出てこない。兄は「人間は…戦争もする、アホないきものや。人生いうんは思い通りにならん、辛いことだらけや」とてんに言うのだが、これでは「戦争」が何のことかもわからないし、病弱な兄の屈託も、そのことばの重みも伝わらない。せめて少しでも日露戦争の描写をしておけばよかった。

 その兄は「家族の笑顔に包まれ」亡くなったとナレーションで告げられたのだが、いくら「つらいときこそ笑うんや」と兄妹が約束したからといって、跡取り息子を若くしてなくすというそのときに家族が笑顔になるなどということがあり得るだろうか。まさかてんが今際の際に「あーっはっははは」と笑いだしたわけでもないだろうから、その笑顔が生まれる過程をきちんと描いてくれたらよかった。

 栞と会った日に出資の話がまとまり、その日に藤吉と逢い、その翌日にてんがぼーっとしているときには、もう店は洋薬の店になっており、しかもまだ藤吉はじめ一座は京都にいるらしいのだが、いったい今は何年何月何日なのだろう。

 まあ、このドラマに関しては、以上のようなことをいちいち考える態度がそもそも間違っているので、毎日毎週新しい話が始まるのだと思って(それは連続テレビ小説ではないと思うのだが)、気楽に見るのがよいのかもしれない。