カートゥーン・ミュージックについて
アニメーション漫画のことを「(アニメイティッド)カートゥーン」なんて言うんだけど、
こんな言い方は、いまどき流行らない。ジャパニメーションブームの昨今では、
英語圏の人だって「アニメ」という和製英語の方がぐっとくるかもしれない。
でも、「○○トゥーン」って言い方をあちこちで耳にしたりはする。
賑やかでやたら気が変わりやすいもの、ちっとも落ち着きがないもの、
夢のような甘い調べ、と思いきや、夢のように裏切りやがるもの。
ここで書くのは、そんな「トゥーン」な音楽の話。
1920年〜50年代に流行った数々のアニメーション漫画映画の音楽の話。
だから「カートゥーン・ミュージック」というわけ。
でも、これは思い出話なんかじゃない。
ぼくだって、カートゥーン・ミュージックのことを
リアルタイムで知っていたわけではない。はじめてカートゥーンを
見たのは、劇場ではなくTVだった。カセットレコーダーを手に
入れた人の誰もがやるように、ぼくも「ディズニーパレード」や
「ルパン3世」やドラマの1シーンをテープにとって、
映像から切り離された音やことばの魅力を知るようになった。
それらの中で、とくに
カートゥーン音楽が気になりだしたのは、それからずいぶん経ってからだ。
(カール・スターリングのCD
「Carl Stalling project」を手に入れた頃だから、1992年ごろだったと思う。)
じつは、ジョン・ゾーンがライナーでベタほめしている「ロードランナー」は
それほど好きなカートゥーンではなかった。
コヨーテの負けがあまりに予定調和的で
子供心にはあまりわくわくしなかったのだ。
にも関わらず、映像から切り離された音楽はとても速かった。
ロードランナー自体より速く感じられた。
ロードランナーばかりじゃない、バッグス・バニー、ダフィ・ダックなど
ワーナーブラザーズのカートゥーンを作っていた
カール・スターリングのCDの速いこと速いこと。
で、「じゃあ『トムとジェリー』の音楽をやった人のCDも当然あるよな」
と思ったら見つからない。
当時よく行っていた喫茶店で「トムとジェリー」のビデオがかかっていて、
アニメーションはもちろんのことその音楽のおもしろさに参っていたので、
ちょっと意外だった。
しばらくしてこういうことにかけては
人並みはずれてマニアックな知人のK氏がアメリカから、
ケーブルTVを録画した大量のカートゥーンビデオを送ってくれた。
これでぼくはハマった。毎晩カートゥーンを見ながら
倒れるように眠り、カートゥーンの続きを夢に見た。
そのテープの中身はいろんな会社のカートゥーンのごちゃまぜだったけれど、
中でも「Avery」という人が監督しているやつがおもしろかった。
あとでわかったことだけれども、その「Tex Avery」という人は
ワーナー・ブラザーズ、MGMを渡り歩いて、新しいアイディアを山のように
カートゥーンにぶちこんだ人だった。
そして、おきまりのLaser Boxに手が出て、後はおぼろ。
「トムとジェリー」とテックス・アヴェリーの諸作品の音楽を担当していたのは、
スコット・ブラッドリーという人だった。彼は1938年から1958年にかけて、
MGMカートゥーンのほとんどの音楽を手掛けた。つまり、この頃、
カール・スターリングを中心とするワーナー・ブラザーズの音楽スタッフと、
スコット・ブラッドリーを中心とするMGMの音楽スタッフが、競いあうように、
速くて切れてるアニメーション音楽を量産していたというわけだ。
ここでは、彼らの音楽を中心に、
ぼくのごく個人的な趣味から、
カートゥーン音楽の魅力について書いていこうと思う。
思う、なんちても、誰が読むんだろうかという気もするが、
いやいや世の中なめちゃいけない、こんな重箱の隅のような話でも、
ぼくの知らない、海より深いところにつながってるかもしれないもんね。
というわけで、こんなんどうです?、わたしはこうよ、などなど
掲示板への書き込みを歓迎します。
ところで、アニドウのページを見ると、ほんとこの世界は海より深そう。
しかし、まあそこは素人の気安さ、
楽しいと思うところを気ままに掘ることにしよう。
フライシャーはもちろん、サイレントフィルムもアリなら、
マクラレンもシュヴァンクマイエルも「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」
もニック・パークもアリだ。
(そしてぼくがまるでくわしくないディズニーだって、もちろんアリだろう)
というわけで、気の向いた人も向かない人も、Cartoon Music へようこそ!
(98.04.25 改訂)
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