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20000819


M殤chen -> Weimar



 朝、ミュンヘンからワイマールへ。

 ヨーロッパでは、列車の中でクロスワードパズルを解いている人をよく見かける。特に老年の女性に多い。日本ではあまり見かけない光景だ。
 日本語のクロスワードパズルがいまひとつ面白くないのは、ひらがなと音とがほぼ一対一になっているからだと思う。だから音を唱えながら解くことができてしまう。
 ドイツ語だと、たとえば「c」がタテヨコの要になっているときに、それはschの「c」なのか、chの「c」なのか、chならどの発音か、といった揺らぎがあって、音を唱えながら考えても必ずしも正解には結びつかない。逆に言えば、考えていたのと違う音だとわかるとき、ゲシュタルトががちゃりと変わる気持ちよさがある。

 北に上がるほどに、打ち捨てられた家が心なしか目立つようになる。ナウムブルクで乗り換えて30分ほどでワイマールに着く。
 駅舎の前はがらんとしていて目の前の通りには真新しく塗られた建物が続いている。やけにファサードがつるんとしているなと思い、小路に入ると、あちこちに壁のはがれた家があり、えらく街がぎくしゃくしている。中心部に行くほど、街の断続は激しくなる。大振りの石積みの博物館は妙にそっけないし、その裏で煉瓦積みの建物は打ち壊されつつあるし、表の広場は整いすぎているし、どうもよそよそしい。同じ空襲を体験した街でもミュンヘンにはこういう断続性は感じなかった。それは、戦後に建てられた家並みにあちこち修復がほどこされ、さまざまな時代のあとがまんべんなく感じられるからだ。ところがワイマールでは、何年も放ってあるらしい建物があちこちにあり、また、住まわれている建物も老朽化が激しいものが多い。いっぽうで行き届いた家並みは露骨に新しいので、よけいにその差が激しく感じられる。街並みに明らかな時間の空白があるだけでなく、金の使いどころにはっきりとした差が感じられる。時代の流れに対するある種の敵意がある。
 なるほど、これが旧東側の町か、と思う。

 まあ、土曜の午後だからな。月曜になればもう少し街の呼吸も感じられるようになるだろう。

 夕方、街を一回りして、イルム川のほとりをゆっくり散歩。

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Beach diary