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19990827



 朝の散歩。あたりは森と牧草地。ライン川の支流あたりまで行って戻ってくる。

 ペンションで動物園への道を聞く。どうもいったん駅に戻って別の方向らしい。というわけで、バスで駅に戻って荷物を預ける。ツーリスト案内所に昨日の女性がいる。「どうでした、広い部屋だったでしょ」「うん、ほんとにすごく広かった」バスの番号を尋ねて、アーネム動物園へ。

 なぜオランダまで来て動物園かというと、アーネムの動物園にはドゥ・ヴァールの「政治をするサル」で有名になったチンパンジーのコロニーがあるのだ。その現場を一度見てイメージの助けにしたかったというわけ。
 まず、柵がとても低い。これはチンパンジーの放餌場に限ったことじゃない。よく動物が逃げないもんだと思うけど、注意して見るとそれぞれの動物の性質にあわせて、ウォーターハザードやちょっとした壁が設けてある。で、一般客はベンチに座ったり、丸太小屋からのぞいたりしながら、時間をかけて動物を見ている。
 もちろん、初めて見ていきなり個体関係のあれこれに目が行くわけではなく、叫び声にはっとしてそちらに目を向けるとすでに事は終わっている。
 それでも、どれか一個体を決めてしばらく眺めていると(つまり簡単な「個体追跡法」をすると)「政治」の事情の一端に触れたような気にはなる。まあ、ドゥ・ヴァールのような詳細な記述をしようと思ったら1ヶ月やそこらでは無理だろうけれども。一頭、複数の個体から攻撃を受けては隅に追いやられるのがいて、そいつをしばらく眺める。

 その後、巨大な室内砂漠やブッシュも見たが、どうしてもアリゾナやボルネオのことが思い出されて、うんざりしてしまった。そして戸外のサハリでは松やカシワを中心に、オランダの二次林特有の植生の中に、キリンやライオンですか。いかん、この植民地妄想の集積のような動物園は、ぼくにはバッド過ぎる。一刻も早くここを離れよう。

 デン・ハーグへ。

 ホテルの横にD-Zonという妙な店がある。じつは前に泊まったときにもウィンドウに飾られたガジェットの趣味が気になっていたのだが、夏期休業で閉まっていたのだ。
 というのを、ホテルを出て前を通り過ぎようとして思い出した。あ、今日は開いてるじゃん。で、中に入ったとたんに一発でわかったよ、この店にはぼくの欲しいものがあるって。ぼくの欲しいものは何だろう。ほらあった。歴代のヴューマスターのヴュワーだ。それから、True Viewまがいの妙なヴュワー。で、棚の隅に固めてあるのは、カートゥーンのSuper8のフィルムだ。バックス・バニーにポーキーにダフィ。おっと東映動画の海底二万マイルだって。しかもイタリア製。ってわけで、映写機も持ってないのにあれこれ買ってしまう。
 若い店主が「これなんだと思う?」と出してくれたのは、ソ連の50年代の教育用フィルム。大使館の前に捨ててあったんだそうだ。ロシア語はてんで読めないが、どうも映画好きの少年がカメラを手に入れてあれこれ撮っているうちに偶然スパイを見つけて大手柄(一部妄想)という内容らしい。で、それからなぜかソ連共産党の話になって、それから第二次大戦の話になり、さらに日本によるインドネシア統治下におけるオランダ人の収容所生活の話になる。彼の親の世代は収容所生活を体験している。
 「でもさあ、日本人とこんな話したの初めてだよ。」「こんな話するとはぼくも思わなかったよ。なんでこんなんなったんだっけ。」「あ、これだ」というわけで、ようやくそのソ連製教育フィルムを買う。それから閉店時間を過ぎて無駄話。

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Beach diary