19990824昨日のパスタの余韻でぐったり。朝食の後2時間ほど横になる。それからまた街へ。火曜日はマーケットの日で、あちこち花盛り。こっちの人はほんとにひまわりが好きだな。そしてあの丈の長い茎を抱えて歩いていく。吉野朔実のマンガみたいにね。 地下に向かって扉を開けてる古物商に入る。上にウィンドウがあるものの、階段を降りるまで店の中身が見えない。だから、地下の店に入るときは、少し気構えをする。あまり頻繁に人が出入りするわけではないから、ゆっくりと話をして、あれこれ見せてもらえる。 で、この店、一見、鉄道模型のアンティーク専門みたいだけど、ほらほらあるぞ、ゾートロープにランタン。ウィンドウに大切に飾ってあるので、相応の値段なんだろうと思って聞いてみると、桁が違うのかと思う安値。どきどきしながら、努めてポーカーフェースで応じると、え、箱も種板つけてこの値段? 他に種板がないか聞いてみると、奥からいろいろ出してきてくれる。うわあ、たくさんありますね。え、これもこれもこれもつけてくれるんすか? アルプスにユーモアに、これなんかまるでパノラマ画だよ。でも、おじさん、これ、たぶん別の幻燈機用の種板だよ。いいのかな。 というわけで、19世紀から20世紀の初めにかけて蒸気機関モデルをつくってたE&Pの幻燈機を入手。キャッシュで払っておじさんもぼくも大満足。固い握手をして別れる。取引のある握手はいいね。 午後、Das Bauhausへ。女主人の積み木を扱う手付きがなんだか大道芸みたいで楽しい。コーヒーを御馳走してもらいながら話。クレーの絵みたいなP. Clahsenの積み木を買う。その間にも何人も観光客が出たり入ったりする。 昨日気になっていたTeo Jacobへ。イームズの椅子を作っているVitraをはじめあちこちの工業デザイナーを扱っているらしい。地下のインスタレーションをあれこれ見せてもらい、カタログを山ほどもらって帰る。 物欲を発揮した後は、Migrosで野菜グラタンを買って2CHFの夕食。結局これがいちばん安くて量も手頃。 ホテルに戻ると「じつはちょっと問題が起こりまして」と言われる。ぼくが買い置きしていたワインを掃除係が割ってしまったらしい。幸い荷物は濡れていなかったし、代わりに買ったのよりはるかにおいしいスイスワインをもらった。ただし、部屋は確かに猛烈にワイン臭くなった。 さあ、今夜はサーカスだ。猛獣の糞尿の匂いがたちこめ、絵に描いた星がぺかぺか光るテントで、象が足を上げたり一輪車が綱渡りするのを見るのさ。Knieはスイスでいちばん有名なサーカス。 低い丸天井をいただく見世物の数々。20時から始まって、途中休憩をはさんで23時近くまで。中国雑技団は10点とって当たり前。集団演技って失敗が落ちこぼれに見えてしまう。マッスル4人組の演技、失敗をチャレンジとして表現できる余裕と時間と色気。危険を感じさせるのがサーカスの醍醐味。馬に飛び込まれる怖さ、象に踏まれる怖さが必要。だから中央と客席の円形の境目は、道化によって繰り返し無効にされなければならない。空中ブランコの照明の揺れ。ブランコが揺らしてるみたい。とても照明係が手で動かしてるとは思えないな。ブランコが怖い瞬間っていつだと思う?いちばん高いところじゃないんだ。だって、そこではスピードが0になるから。弧の一番下にきたときがいちばん怖いんだよ、だって影がいちばん大きくなるから。お国柄を反映してマルチリンガルな道化たち。大ピエロは総元締めって感じで、あまり芸はしない。はろーすいっつあらんど!とグレートブリテンなスーツを来たブロンドかつらの女道化が、越前屋俵太みたいによく転ぶ。 で、フィナーレは、華奢なクーニャンがマッチョなジプシー男の肩に乗ってご挨拶。華やかでちゃんとせつなくさせてくれるんだな。いずれのキャラクターとも別れがたい。 帰る頃には街の人通りも消えて、路面電車がカーブを切ると11時の鐘が鳴って、ブニュエルの映画みたいにこのままどこかへ行ってしまいそうだったよ。 12時近くホテルに帰還。表は閉まっていて、ブザーを押すと夜勤の係がエレベーターで降りてきた。あの、クリップを使ったな。 |