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19990806



▼830起床。朝食と荷造り。▼1049ブリュッセル北駅発。満員。
立っているぼくのアロハが揺れて、乳母車から乗り出した赤ん坊がすそをつまむ。
薄い金髪におおわれた頭を上から見るとえらく縦長で、エイリアンみたいだ。そのエイリアン頭が傾いてこちらを見上げる。目は少し寄り気味だが愛敬がある。はにかんで下を向くと、またエイリアンになる。
父親はその乳母車をつかんで補助席にすわっている。
赤ん坊には動物絵本を渡し、もう一人の年かさの子供にはタンタンを渡す。赤ん坊は絵本でこちらのすそを触り、絵本でドアをこつこつ叩いて、また見上げる。父親は絵本を開く。池の動物たちが見開きに並んでいる。Ca c'est quoi? Et ca?と尋ねながら鳴き声を言う。ぼくも赤ん坊といっしょにフランス語を勉強する。しかし赤ん坊はじきに絵本から目を離してすそやドアを触ろうとする。父親は膝のリュックからピングーの本を取り出す。英語で書いてある。父親がもう一人の子にかまっている間に、赤ん坊は二ページほど開いて、コマを指してウォーとかクォーとか言ってから、またすそとドアを往復する。ピングーがしまわれて、今度はテレタビー人形が登場する。テレタビー語で乳母車のまわりをいないいないばあをする。それが終わると猫の絵本が出る。これはオランダ語だ。二ページほど開いて、ああ蜘蛛が下がってるねとか、猫がいるねとか父親が言っている。それもたぶんオランダ語だが、ぼくにはよくわからない。赤ん坊にもよくわからないらしく、自分で本を閉じると、エイリアンになったり寄り目になったりしながら、細い背表紙の角ですそを触り、ドアをこつこつやる。リュックからテレタビーが出ていないいないばあをする。

▼1340
 アムステルダム到着。観光案内所に行くがすごい人。こりゃいかん。テレホンカードを買って地球の歩き方に載ってる手ごろなホテルに片っ端から電話するが、「Sorry, it's full」の嵐。観光案内所に戻って列に並ぶ。そうか今日はハイ・シーズンの週末なのだ。一人30分くらい窓口でねばる人もいて、列は遅々として進まない。いっそここで「ウィークエンド」みたくバカンスしようか。結局約2時間半待たされてようやくぼくたちの番。「アムスの市街にアクセスできるところで、やすいとこどこでも」というと、「エアポートホテルかホリデイ・インはいかがでしょう?」かーっ、そんな機内パンフみたいな眠たい返事を聞きに2時間半も並んでたんじゃねえぞ。「ライデンはどうでしょう?とってもいい町ですが」「ホールンならいいのがあります。駅から10分ほど歩きますが」などと、京都に泊まりたいという客に草津や枚方を薦めるようなことを言う。わかったわかった、もうデン・ハーグに泊まるよ。あそこなら駅前だし。というわけで、電話番号を言ってかけてもらう。結局、こっちが紹介したのになぜか紹介料をふんだくられた。列の他の人もアムスのホテルはほとんどとれてない模様。要するに混み過ぎているのだ。なんでみんなアムスにくるんだ?(ぼくたちも含めて) コーヒーショップも美術館も運河も海もビールもデン・ハーグにあるのにさ。
 やれやれ。せっかくアムスにきたので散策でもしますか。まだ予備知識がなんもないのでにぎやかげな通りとあやしげな通りを足の向くまま。しかし話には聞いていたが、駅の構内から通りからすでにそれとわかる甘い匂いがして来て酔いそうになる。運河のほとりで、けだるく外を眺めながらくゆらせる人々。飾り窓あたりはビデオラマ、セックス・オ・ラマとラマラマな世界。チューリップ、トラムの継ぎ目のでかい広告、でかいディルド。オランダって変な国だ。

▼夜はデン・ハーグでビール、ゆうこさんとお互い一日の労をねぎらう。結局朝から晩までほぼ移動に費やしたもんな。通り掛かりの映画館でカトリーヌ・ドヌーヴ特集をやってるので飛び込む。かかっていたのは「妊娠した男」(邦題忘れた。マストロヤンニが妊娠するやつ)。英語吹き替えで字幕なし。他のプログラムも英語吹き替えが多い。。オランダ人は、オランダ語で映画みなくていいのか?っていうか、フランス映画の人物たちがアメリカンホームコメディみたく英語をしゃきしゃきしゃべってていいのか?まあいいや、月を人が歩く時代にはドヌーヴが英語をしゃべってもおかしくないのだ。今日は疲れたので、ドヌーヴのセーターごしの透け乳首が熟しすぎだなあ、なんてあいまいな勃起をもてあまし妊娠を思うなり。

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Beach diary