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19990807



 気を取り直してアムスに再挑戦。といってもでたとこ勝負なのだが。まずは西教会の40mの鐘楼に上る。カリヨンの演奏器が木製のキーボードだとは知らなかった。これであまねく町に音を響かせるのだな。唐突に鉄腕アトムに出てきた「人工太陽」の巻を思い出す。「私の太陽」って曲をキーボードで弾いて人工太陽をコントロールするやつ。
 上にのぼるとアムスが一望できる。やはり他の教会が突出している。塔がランドマークになっている町。足元にすごい列が並んでいるのは、どうやらアンネ・フランクの家の入場者らしい。ここも人混みか。降りて教会のパイプオルガンをしばし聞く。モノトーンがメロディを奏でるとき、送り出される空気の音が微妙なアーティキュレーションを産む。管楽器の音だ。パイプだもんな。

 さて日曜だ。休みだ。観光客らしいことをするぞ。というわけで水上自転車で運河をこぐ。見下げたあとは見上げるのだ。川面から振り仰ぐ西教会のでかいこと。さっき上ったのはまあ六合めあたりだった。ゲイ・レズビアンパレードの派手な船とすれ違う。橋をくぐる楽しみは観覧車に似ている。
 東門の下で金管アンサンブルをしばし聞いて、国立ミュージアムへ。第二次大戦中の日本占領下のインドネシアの特集。当時の人々の手紙や現在の談話から、日本・インドネシア、そしてかつての統治者オランダの人々の記憶がどう構成されどう変化したのかを見る企画。日本語教育に関する資料や、占領前後のオランダ人の境遇に関する資料が充実している。あとでショップに行くと、年配の人がカタログをどんどん買っていた。たぶん、戦時中に子供だったか、親が収容された世代の人だ。
 時間がないので(といっても3時間はあるのだが)、あとはざっと見て回る。19世紀のジオラマが二点ほど飾ってあったが、パースが歪んでいて変。そしてフェルメールの4点を現物で初めて見る。ミルクの糸。小さい絵はいいな。ゆるがせにできない筆の一撃がわかる。
 「夜警」。でかすぎる。絵そのものよりも配置の仕方がすごいと思った。
 美術館を出ると、まだ金管アンサンブルをやっている。タフだな。さすがに音は割れていて、トランペットの音はへろへろだったが、三時間吹いてまだあれだけ吹けるのならすごいや。
 あとは運河沿いに歩きながらアムステルダム・パレード(どうやらゲイ・レズビアン・デイらしい)を見たり、カフェで和んだり。

 デン・ハーグに戻る。アムスで買ってきた「Psilosibe Tambanensis (Philosopher's Stone)」というキノコを試すと、30分後にはガツンと来て、1時間後には涙腺と鼻汁がゆるみっぱなしになり、だだ漏れ人間となる。枕に頭を沈めていると、ほとんどスーザン・ピットの「ジョイ・オブ・ストリート」状態。あとは、窓外の飛行機の光がやたらきれいだったり、ライターの光がぐっときたり、「おっとどっこい」が笑いのキーワードになったりと、まあつまりはただの酔っぱらいとなる。その後、酩酊状態で今日買ったばかりの2000年用日記帳に思いついたことを書き殴っていったら、1月から7月まで埋まってしまった。

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Beach diary