かえるさんレイクサイド (30)![]() 芹川の土手には天窓のかわりに出窓が空いた。ちょうど喫茶かえるからの帰り道だ。かえるさんは出窓のそばに座って雨壺山を見ていた。 ![]() 番長だった。「冬はこの辺がじわじわするなあ」番長はイボをちょいちょいといじって見せた。「裏返ってからどうだ?もう慣れたか」そういえば、あれから、ぼうふらミックスの味が変わったのだった。何が変わったかわからないので、かえるさんはよく、ぼうふらのかけらを舌に乗せたまま、舌の先であちこち探った。探っているのが、ぼうふらなのか舌なのかわからなくなった。 ![]() ![]() 「おお、すげえ」番長は振り返ってから声をあげた。 「すげえ」もう一度番長は言ってからじっと色の帯を見つめた。上の方がもう消えかかっていた。ほんとは番長が振り向く前はもっとすごかったのだ。早く番長に言えばよかった。 「こういう色がな、裏返ってからは、やけにじわじわ来る」番長は見とれながらイボをいじった。かえるさんもうなずいてイボをいじった。いじっているのが、イボなのか色なのか番長の声なのか、わからなくなった。 |