朝
目隠しを開けガラス戸を閉めるなり
ノヴェーラ広場
青空に壁なす教会の奥知らず
ピアッツァを星形に行く四人連れ
回廊はアーチの影を壁に投ぐ
San Salvatore in Ognissanti(天井画はGinseppe Benucci, Guiseppe Romei, 1770)
正しき位置より歩み寄る祭壇高し
トロンプユイユ正しく見る地 示されず
マドンナの衣に尼は隠れをり
Santa Trinita
教会の戸口にサイレンの音険し
フレスコの剥がれしチャペル 陶細工
かつて広場に 聖者に集う人ありき
ボンジョルノボンジョルノと恵み乞う老女
Santo Spirito(いもようかんを切ったような建物、ファサード屋根の曲線)
進むほど両のチャペルを裏切れり
チャペル並ぶ回廊 丸き屋根を持つ
翼掲げ 手はキリストに誘ええり
翼鋭く飛び来し方を指し示す
ブランカッチ礼拝堂(天井画はMucci)
逆さまの磔刑の十字 眠り人の柱
楽園の眠りは一人 追放は対話
マッソリーノが切り開いたブランカッチ礼拝堂のフレスコは、マザッチョによってパースペクティブと感情を与えられ、フィリッピーノ・リッピによって
その構図は謎めいた。複数の描き手によって描き継がれることで、時間と場所を飛躍した意味が事後的に生まれた。事後的に生まれた意味は、事前の意味に再参入しながら
思考を前に進める。
こうしたことを考える上で、特に手前の四枚の縦長の絵の対照が気になる。
夜、通りかかった骨董屋で、透かし絵を使った電球の傘を買う。
寺巡りとレストラン巡りのベテランである青山さんと田尻さんに行く先はほとんどおまかせ。昨年もそうだったが、知人情報とRetardを組み合わ
せ、毎夜、安くておいしい店に連れていっていただき、ありがたい限り。四人で前菜を二人分、Primiを二人分、Secondを二人分、という風に半分ず
つ頼みながら分けていくと、安上がりだし、ボリュームもちょうどになる。昨日はフィレンツェ風ビーフステーキを食い、よろめきながら宿へ戻った。今日は鳥
のレモン風味に舌鼓。