喜多川周之著作一覧(2)

絵はがき近代史

(「歴史読本」新人物往来社、昭和47年1月 - 昭和52年3月)


昭和四七年
「新企画 絵はがき近代史」(S47.01)
「韓国総督府と伊藤博文」(S47.02)
「日露戦役後の日米交流」(S47.03)
「横浜開港と維新の元勲」(S47.04)
「奠都記念と江戸城」(S47.05)
「大相撲黄金時代」(S47.06)
「海軍記念日と東郷平八郎」(S47.07)
「憲法発布と国会議事堂」(S47.08)
「明治・大正の停車場」(S47.09)
「関東大震災」(S47.10)
「鉄道開通一〇〇年」(S47.11)
「日本の赤十字」(S47.12)
昭和四八年
「明治天皇と皇室」(S48.01)
「浅草寺と浅草公園」(S48.02)
「上野公園と博覧会」(S48.03)
「芝・深川・飛鳥山公園」(S48.04)
「第一次大戦ポスター集」(S48.05)
「第一次世界大戦青島戦」(S48.06)
「シベリア出兵と尼港事件」(S48.07)
「透かし入り歴史物語」(S48.08)
「細工絵はがき」(S48.09)
「木版摺り絵はがき」(S48.10)
「手描き肉筆絵はがき」(S48.11)
「石版刷り絵はがき」(S48.12)
昭和四九年
「明治天皇と皇族」(S49.01)
「大正天皇と皇族」(S49.02)
「今上天皇と皇族」(S49.03)
「乃木希典陸軍大将」(S49.04)
「関ヶ原合戦三百年祭」(S49.05)
「歴史人物肖像集」(S49.06)
「息吹く日本列島」(S49.07)
「明治43年東京大水害」(S49.08)
「日露戦役東京凱旋門」(S49.09)
「新日本橋渡り初め以来」(S49.10)
「日露戦争と焼打ち事件」(S49.11)
「東京停車場開業」(S49.12)
昭和五〇年
「皇居の一世紀」(S50.01)
「帝都祝典三重奏」(S50.02)
「鳥人アート・スミス」(S50.03)
「帝都復興記念」(S50.04)
「明治の日米大学野球」(S50.05)
「日英博覧会」(S50.06)
「国会の花形と新議事堂」(S50.07)
「明治神宮創建」(S50.09)
「隅田川の移りかわり」(S50.10)
「首都東京の市域拡張」(S50.11)
「白瀬中尉南極探検」(S50.12)
昭和五一年
「明治の年賀絵はがき」(S51.01)
「三代の戦地慰問」(S51.04)
「東京港の築造」(S51.05)
「大正のうたごえ」(S51.06)
「英国皇太子ご来朝」(S51.07)
「陸軍生活二十四時」(S51.08)
「明治新吉原」(S51.09)
「東海道五十三次」(S51.10)
「日本最初の飛行機」(S51.11)
「名は高輪泉岳寺」(S51.12)
昭和五二年
「聖徳記念絵画館」(S52.01)
「日露戦役記念」(S52.02)
「絵はがきにみる地図」(S52.03)

(S50.08, S51.02, S51.03 は休載)


 氏のコレクションである絵はがきをふんだんに駆使したこの連載は、ともすれば「資料提供」としてのみ名を挙げられている氏の絵はがきに対する態度が表われていて、通読すると、ひとつの絵はがき論が浮かび上がってくるかのようだ。
 掲載雑誌の性格上、史実をテーマにした回も多いが、氏の面目が表われているのは、土地に根ざしたテーマの回、そしてS48.08に掲載された「透かし入り歴史物語」に始まる絵はがきの技法の回だろう。氏の文章からは、忘れられがちな職人の技を丹念にたどり、その技を土地の記憶や情緒へと定着させていこうとする意志がしばしば感じられるが、この一連の文章も例外ではない。たとえば以下の「木版摺り絵はがき」の回では、短い文章の中で、明治以降の錦絵、挿絵をめぐる職人たちの歴史が絵はがきに凝縮していく過程がたどられる。

 極端に縮小された名作の構図はともかく、はがき判錦絵に見られる彫師と摺師の腕前は、ただ美事と云うほかはなく、その技術には惚れ惚れとするものがあり、錦絵に魂を入れて、無頓着に精進した彫師と摺師の技法の昇華がここにあるようだ。
 光と陰の画家といわれる小林清親や、井上安治の新版画の版元として知られた、日本橋両国の大黒屋・松木平吉も、絵はがき流行の時期には、「風俗画報」で馴染みの山本松谷(昇雲)作の花鳥シリーズを出版するが、その出来栄えは群を圧していた。(「透かし入り歴史物語」S48.08)  

 
 氏自らも職人であった石版刷りについて書かれた部分では、あちこちでさりげなくその職人技が語られている。以下にいくつか抜き出しておこう。

 石版刷りの風景絵はがきには、錦絵のように色数を使ったものが多い.三原色のうち赤や藍、また墨などは濃・中・淡といった段階職が用いられ、さらに掛け合わされて色感が複雑となり、いまでは油性の印刷インキもすっかり枯れたのか、深みのある水彩の趣きにさえなっている。(「石版刷り絵はがき」S48.12)


 2ミリ角のこれらの文字は石版製版の場合では逆書きなのである。それも筆書きなのである。
(「絵はがきにみる地図」S52.03)



(2001 August 18)

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