ひょうたん池で鯉を釣った話(2)


 瓢箪池で鯉を捕まえるんだよ。でも、鯉をばたばたさせちゃいけないの。池のそばには園丁ってのがいて、みつかるとこっぴどく怒られちゃうからね。じゃ、どうやって捕まえるか知ってる?一升瓶を使うんだよ。ちがうちがう、口から入るわけない。一升瓶のね、底をぽーんと抜くんだよ。

 一升瓶ですくうんじゃないよ、釣るの。釣るのは黄色い糸。昔は、三味線やなんかで切れて短くなっちゃった糸を束ねてあって、それを分けてもらえたの。で、それの先にイカリ針っていってね、先がこんな3つに分かれてるごつい針をつける。それに煙草の吸い殻とかをつけとくわけ。で、その糸を一升瓶の底から口にするするっと通す。

 で、池に吸い殻をじゃぽんとつけると、鯉とかは蛾だのなんだのにぱくっと食いつくでしょう。あいつらなんでも食いつくんだから。だから吸い殻にも食いつくの。で糸をひっぱる。ってえと、そのまま一升瓶の中にすぽっと入れちゃう。すると鯉はもう動かない。ね。それをばれないように抱えて、近くのおじちゃんのところに持ってくと売れるわけ。これで小遣いは当分これ。だいじょうぶ。昔はどこの家の庭にも用水桶があって、そこで金魚とか鯉とか買ってるわけ。そういうところに売れたらしいんだな。そんなの一人で思いつくわけないんだけど、昔はガキ大将ってのがいたでしょう。で、その辺の連中がグループ組んでたから、知恵がついてくわけ。小学校3年生くらいのことですよ。

(昭和元年生まれの浅草育ちの人の話/1998.08.27細馬採取)



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