朝、ベルン08:32分発。TGVで国境を越える。谷間の村。なだらかな山腹が両側に広がる。ブルバキのパノラマの村。
フランス側に入ってしばらくすると、谷は開けて山は遠のき、牛は平地に並んで草を食む。
La Chemin Vert通りのHotel Modernというところに泊まる。ダブルで75Euro。けっこうな値段だ。部屋は五階で、しかもエレベーターなし。窓は通りに面していて眺めはいいのが救い。
空がゆっくりと暮れること。
パリの美しさは、日暮れのゆるやかさではないだろうか。La Chemin Vertの坂を上る。空がまだ明るさを残している時頃、地上階より二階高く掲げられた街灯が次々とともる。そのオレンジ色が、それまで青白かった空の色を一気に深くする。振り返ると、七階建ての街並みは坂を下りながら水平線に向かって集まっていき、その中心にモンパルナス・タワーが小さくそびえている。そこはちょうど陽の落ちたあたりで、西の空は青ざめながら地上近くで少し赤みを残している。坂を上るあいだじゅう、日は暮れ続けていく。