Texture Time: 13 August 2000
Zurich -> Munchen
Lindauで湖は開け、
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いましも岸から飛び込もうとする女性が見える
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きつい葉巻の匂いが隣から漂っている
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女の子はここを通り過ぎるたび
画面をのぞき込んでは、何事が起こっているのか確かめる
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打ち込まれたひらがなが漢字に変わるのが
おもしろいらしい
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そして何か新しい秘密でも見つけたように
母親に伝えにいく
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広く開けた湖のある町
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強い陽射しが湖から照り返す町は
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ローザンヌを思わせる
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ルツェルンのように湖をひた隠しにし
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秘密を持たない町
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広い湖じたいがある種の秘密なのだから
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これ以上どんな秘密がいるだろう
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そして秘密には飛び込むだけでいい
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母親は女の子の報告に飽き
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席を移り本を読みはじめる
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列車は湖を離れカーブを描く
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陽射しの向きが変わり、この画面を照らす
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そしてこの画面が陰るまで待つ
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この席が陰るとき、外の光は濃くなる
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牧草の一本一本の輪郭が列車のスピードにこうして眼に飛び込んでくる
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二頭のシロチョウが追いかけあうのが見える
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この列車のスピードで、夏の光はそれほどにはっきりと事物をとらえる
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女の子は母親の向かいに腰かけると
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あおむけに寝転がり求めるように指をくわえて体をゆすり
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そして眠たそうに眼をこする
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午後4時の光は斜め後ろから来る。
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列車は北東を指して走っている。
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次に湖を見るのはいつだろうか。
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湖の気配は、水としてではなく
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空白としてまず現れる
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木々の途切れ、山々の連なりの途切れとして現れる
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それが、このいつまでも連続する木々を見る時間を
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破綻させる
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丘陵地が見える
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なだらかな稜線があって、そこからは何ものぞかない
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そんなとき、湖の気配を感じる。
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この旅を分断する気配
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ときには湖は何の前ぶれもなく訪れる
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木々や山が視界を遮り、湖を隠している。
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検札による中断
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スイスからドイツに入ったつもりだったが、
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じつはほんのわずかだがオーストリア
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をかすめていた
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ぼくのユーロパス
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はオーストリアには無効だったので
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追加料金を払わなくてはならなくなった
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スイスフランを使い果たしてぼくの手元にあるヨーロッパのキャッシュは
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オランダのマルクだけで
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オランダのマルクを払ってドイツマルクのつり銭を得た
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オーストリア
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がどんなだったかを思い出してみる
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それはLindauの少し手前だったはずだ。
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湖を離れしばらくして
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また別の湖にたどりつく、少し前のことだ。
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ぶれぐんつ
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と車掌は言った
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00.8.13 16:10
女の子は眠ってしまった
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指をくわえたまま
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そして小高い丘に出る森林と牧草をのぞき込むように走る
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Kissleg
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