吉田初三郎:琵琶湖名所鳥瞰図

Cover


絵に添へて一筆
 富士と琵琶湖、そは世界に対して、我等日本人が優美を誇る象徴の双璧であらねばならぬ。予曽つて鉄道省より発行の、鉄道旅行案内装丁並に挿絵執筆に当り、あまねく全国に写生旅行を試みたるも、未だ琵琶湖の如く、交通至便にして風向美の雄大なるを見ず。今や本図刻成る。幸ひに諸氏が遊覧の栞ともならば幸甚のみ。
 洛東高台寺畔松千代にて 吉田初三郎識

   (パンフレットの裏書きより)  


 パンフレット全体を開いたところ。実際には絵図の下に各所案内が簡略に記してあるがそれはトリミングしてある。
 まず一見して、地図が大きくデフォルメされているのに気づく。琵琶湖は、竹生島を大きな頭にして、ゆったりと仰臥しているように描かれている。山が間近に迫る湖西を向こうに、複雑な湖岸と平野部を持つ湖東を手前に配置することで、湖は見る者の前に身体を開いている。