Oaxaca diary : Dec. 2004


Oaxaca diary | 月別

20041223

 寝汗をどっとかいた。やはり熱があったようだ。昨日の夜より少し体は軽くなったが、あいかわらず気だるいので、日向を避けてぼんやりする。  朝飯は昨日と同じ屋台のスープ。23トルティーヤ。お、少し安くなった。

   Fiesta de los Rabanos (Radish)の祭り。

 豪勢な13人のコーラス。

 とうもろこしは稲穂の直食いである。

 閉口するのは通りの騒音だ。さほど広くない街路に面した部屋なのだが、ありとあらゆる音がする。夜の12時を過ぎても、交差点では平気でクラクションが鳴らされる。それもしつこく何度もだ。「テキーラ」のメロディで鳴ることもある。踊れというのか。
 トラックが止まり、エンジンをふかし続ける。駐車したまま5分でも10分でもふかす。これががたがたとひどい音がする。窓を開けていると排ガスが匂ってくるほどだ。一般にこのあたりの車はとても環境に悪いエンジンを積んでいると思う。
 さらに、近くの車だか建物だかに防犯サイレンがつけてあるらしいのだが、これがよく誤動作をする。いったん鳴り始めると3,4分は続く。何のサービスのつもりだか、早口のスペイン語のようにあらゆるメロディでなる。ぷーわっ、ぷーわっ、ぷーわっ、ぱらりらぱらりらぱらりら、ぴーぽーぴーぽー、ひらがなで書き写すとまるで冗談のようだが、これが夜中の2時に鳴る。車の主は止めに来る様子もない。こう頻繁だと、もはや防犯の意味がない。


20041222

 ちょっと気だるい。暑さと標高の高さのせいだろうか。疲れやすくなっているようだ。昨日はあちこち出歩いたので、今日はやや少なめにしておこう。  ゆっくり起きて、市場でモツ煮込みスープ。今日の店のは、豚の皮の近くを下ゆでしたものをナイフで切り取ったのをぽんぽんとスープに放り込んでくれる。トルティーヤとスープの食い終わりが揃わない場合は「おかわりする?」と聞かれる。スープが余っていればトルティーヤを、トルティーヤが余っていればスープを足す。トルティーヤは枚数分だけ金をとられるが、スープのおかわりは具を足さなければ無料。25トルティーヤなり。トルティーヤを食べるときの左手の使い方はとても印象的

 ガイドブックによれば、北にあるEltaという町の水曜日のマーケットは見ものらしい。マーケットにツアーで行くのも無粋な話なので、2nd class busのターミナルがあるという、西の市場に行ってみる。ブニュエルの「昇天峠」を見て以来、メキシコで乗り合いバスに乗るのはあこがれだった。
 とにかくずらずらとバスが並んでいてさっぱり分からないので、「Elta」と書いてあるバスのそばに立っている運転手らしき男に「Elta Mercado?」とたずねて見ると、うなずくので、とりあえず乗り込む。
 オアハカの郊外を見るのは初めてで、路傍の風景がいちいち楽しい。ホィールやガソリン缶でできた奇っ怪な人形オブジェがあったり、信号わきにパラソルを立てて、信号待ちの間に窓を拭く商売があったりする。通り過ぎる町もオアハカのダウンタウンに比べるとずっとこぢんまりしていて、舗装されていない砂地を小さなバスが入り込んでいくのが見える。
 そうこうするうちに、ふと「Elta」という看板が目に飛び込んできた。バスはノンストップで飛ばしている。これはたぶん乗り過ごしたのだろう。しかし、もともと半分はバスに乗るのが目的だったので、この際行けるところまで行こうと思い、そのまま乗り続ける。バスはSchi...という遺跡の入り口を過ぎ、さらに「Mexico」と看板の出ている方角に向かってひた走る。それから、Taxho...という小さな町を縫うように通り抜け、しばらく行ったバスの操車場のような小さな広場で終点となった。ここまでの運賃3トルティーヤ。

 どこという観光地でもない、ただの路傍のバスのたまり場で、植物層はおよそサバンナ風。ところどころにウチワサボテン、そして紫色の花にやや分厚い葉をつけた草が目立つ。ぼんやりあたりを歩いていると、「どこまで?」と休憩中の運転手に声をかけられたので、「Elta Mercado」とまた伝えて、今度は着いたら教えてくれと身振り手振りを交えて念を押す。運賃は5.5トルティーヤ。これがおそらく正規の料金で、さっきのは運転手が取り忘れたのだろう。

 バスの車掌の左手。左手が筒状のものを握っている形。  サボテンの味。チーズ。  いちご。   夜。チャチャチャとマンボ。落語と同じく年寄りの勝ち。  熱。トルティーヤの匂いの屁。Mezcalで醸していく考え。


20041221

 朝飯でも、と思い、通りをぶらぶら歩いていると、市場らしき入り口。中に入ると、これはなんとわたしの大好きな公設市場じゃないか。百以上はあるかと思われる店の多くがスープやパンを売っている。どれにしようか迷いながら歩いていると、店の女主人が「はいはい、眺めてないで、すわんなさいよ」というようなまなざしを送ってくるので(こちらの屋台の女主人はみんなこのまなざしを持っているのであろうか)、素直にすとんとスツールに座る。もうすっかりよそ者だとばれているので、彼女が差し出したり指さすものを「Si, Si」と頼んでいく。結局出てきたのはChocolate(なぜか薬草が入っているような味がする)とパン。二つ合わせて$20。ちなみに、いまのレートではメキシコの$11.5(peso)=US$。おおざっぱに言って、$1=10円と思うとよい。

 さらに街をぶらぶらし、いくつかのホテルにあたった結果、安くてよさそうなホテルは、クリスマスはふさがっていた。結局通りかかったhotel trebolというのにする。$550と高めだがこの際しかたない(それでも日本のビジネスホテルより安い)。ちょっとチャラチャラした感じのフロントだが、英語の話せるスタッフがいるのはありがたいし、そばでツアーのアコモデーションもやっている。さっそく午後のモンテ・アルバのツアーを申し込む。

 そこからさらに北上し、サント・ドミンゴ教会へ。金色の祭壇と天井に午前の光。
 教会横が博物館になっている。あきれるほど中が広い。僧院の各部屋にテーマ別に展示が並べてあるのだが、これだけ建物がいいと、何を入れてもそれなりに映える。
 ぶらぶらと奥のパティオに入ると、上から青空が降ってくるようだ。地下への階段を少し下り、改めて見上げると、タレルのインスタレーションのようになって見える。ちょうどレンガの屋根が薄く張り出しているので、エッジで囲まれた青空が、空間色から表面色へと反転している。パティオの上に青いスクリーンを貼ったようだ。そのスクリーンの上を鳥が横切っていく。
 裏は植物園になっていて、こちらも人の気配がなくて、一度は中を歩いてみたいと思わせる。予約が必要だそうだ。

 昼、再び朝行った市場 (Mercado 20 de Noviembre)に戻って、今度はモツ煮込みスープの店に。豚の皮のあたり、ゼラチンを含んだ部分を香草と合わせて煮込んであり、これにライムをぎゅっとしぼって食べる。丸めたトルティーヤをつけてかじってもうまい。$15。付け合わせのトルティーヤを売りに来る女は別会計で一枚$1(激安)。この、ひとつのテーブルに対して複数の会計があるというシステム、なんだかボルネオの公設市場を思い出すな。

 小さなトルティーヤ一枚がちょうど$1だと分かったので、これからは金の勘定をするときにトルティーヤを思い浮かべることにする。$5といわれたらトルティーヤ五枚、いま泊まっているホテルはトルティーヤ450枚(食べきれない!)。食べきれないと思ったら高いということだ。

 モンテ・アルバンへ。英語のガイドのインディヘナの男の静かな語りにすっかり感じ入る。大きな遺跡なのだが、そこであえて声を張り上げるのではなく、逆に声を落としてその広さを実感させる。もちろん遺跡自体もすばらしかったのだが、どちらかというとこのガイドの物腰のほうが気になった。

 宿は通りに面しており、夜はなかなかにぎわしい。


20041220

 朝、タクシーでLAXへ。早めについたのだが、なかなかMexicanaのチケットカウンターが分からない。人に聞いてもそれらしい場所がない。結局あとで分かったのだが、EVAと書かれたまったく別の便の表示のあるカウンタがそれだった。いい加減きわまりない。
 午後の陽射しは高く、カリフォルニア砂漠上空を通り過ぎるとき、砂色の上に小さな虹がみえる。ちょうど陽射しを背に下の方を見ているので、水蒸気の多い部分を見下ろすときに虹ができるのと同じ現象が起こるのだろう。ひとひら、虹色の背をもつ小さな薄雲がゆっくりと過ぎたときは、そのままつまみあげて持って帰りたいほどだった。それからはずっと、よい虹の見える雲を探して窓の外を見ていたが、もうさきほど以上のものは現われず、陽はどんどん傾いていった。

 メキシコ・シティーの空港につくと、いままで嗅いだことのない、もうもうたるタコス風の匂いがして、ああ、よその国にきたなという気がする。国際線と国内線のつながりは迷路のようで、何度も人に聞き直してようやく探しあてた。とにかく、表示が(スペイン語ということを抜きにしても)あまりに分かりにくい。
 オアハカに着き、乗り合いタクシーでホテルに到着したのは8時過ぎ。Posada Catarina。一泊$450(約4500円)。オアハカ内では高い部類だが、部屋がシンプルな木製の家具と白い壁だけでなんとも気持ちがよい。白い壁はいい。白い壁を見ているとさまざまな色のイメージがわく。
 さすがに腹が減ったので、街に出てみる。出てすぐにわかったが、ロサンジェルスとまったく違う。夜歩きしてもストレスを感じない。9時過ぎでもあちこちに人通りがあって、どんどん散歩に行ける。すばらしい。2ブロックほど行った通りには屋台が並んでおり、どれを見てもうまそうだ。立ち止まってみていると「すわんなさいよ」というような女主人のまなざし。おとなしく座る。そして指さされる肉やチョリソーにうんうんとうなずいてとにかく焼いてもらう。うまい。辛い。うまい。他の人が飲んでいる白い湯気の立っている飲み物を頼む。米粒のようなものが入っており、なんとも甘い。トルティーヤの辛さをなだめるような甘さだ。この組み合わせはいくらでもいける。



 

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