64ゼルダで使い飽きなかったのがフックショット。 フックショット、というのは、遠くの的に鎖つきのフック(鈎)を打ち込み、鎖をしまうと同時にこちらの方がフックされた的までびゅーんと移動する道具。ゼルダでは、床の抜けた部分や火で妨害された部分を飛び越えるのによく使う。ただし、的は木などの柔らかいものでないとだめで、石や氷はフックしない。で、岩壁に囲まれて絶対絶命、というときにあたりを見まわすと、絶妙なところにフックできるものがあったりする。そうそう、木の燭台とかもフックできるんだ。それまで火を灯す道具だと思ってたものが、とつじょ移動の道具だってことに気づいてガクゼンとする。ゼルダは、いかに飛び地に移動するか、というアクションパズルの要素を持っているんだけど、フックショットによってこれが非常に多彩になるわけだ。でも、フックショットの魅力は、それだけじゃない。 ゼルダでは、いつもは、主人公の身体ごしに前方を眺めてプレイする。プレイヤーは、主人公の身体ごしに空間を移動する。が、フックショットで標的を定めるときは画面がズームインし、それまで見えてた主人公の頭が消える。じっさいに自分でファインダ覗いてる感じになる。で、何が楽しいって、赤いマーカーで標的を定めて発射!直後に主人公の身体が視野に入って、幽体離脱するようにズームアウトして、とん、と着地するあの感じがいいんだよなあ。大人になってからさらに高性能のロングフックを手に入れることができるんだけど、これだと離脱感が倍でなおたのし。 |
遠距離の標的にロングフックかますときがまたよくってね。まず標的を定めるとズームインするところまでは近距離のときと同じ。で、スイッチオン!するとズームアウトの途中からいきなり視点が標的近くに切り替わって、今度は主人公がぐーんとこちらに近づいてくる。近づいてたと思った瞬間、近づかれてる。この途中からの視点切り替えのおかげで、幽体離脱+能動受動逆転感という、とってもダイナミックな効果が味わえる。 |
ゲームを進める上では、フックショットは遠くへ移動するための道具に過ぎない。でも、その移動を3Dスティック空間で表現しようとすると、画面内の主人公の視点とコントローラーを握ってるプレーヤーの視点との関係をどう変化させるか、という問題が生じる。64ゼルダは、それをきちんと表現の問題として扱って、一瞬のショットの中で実現してる。
その結果、フックショットは、視点移動の道具となり、主人公とプレイヤーの関係を変化させる道具となった。フックショットの引力によって、プレイヤーは、自分と主人公との間の引力を感じるのです。
|