このページでは書籍版ELAN入門の61-62ページで触れた動画ファイルの扱い方,なかでも特定のソフトウェアを利用した動画の変換手順を補足しています.
書籍で紹介した手順でデジタルビデオカメラから取り込んだ動画ファイルは,みなさんの手元ではMTSというファイル形式になっていると思います.MTSファイルはデジタルビデオカメラの規格であるAVCHDで記録された動画ファイルで,品質の高い綺麗な動画を保存するのに向いています.ただしELANで再生するにはやや扱いづらいため,WindowsならAVI形式,MacならMOV形式などの別のファイル形式に変換しておくことをお勧めします.ただしAVI形式のファイルをMacで再生することは難しく,MOV形式をWindowsで再生することもではできません.そこで複数人が異なるマシン環境で作業する可能性を考慮するのであれば,WindowsでもMacでも再生が容易なMP4形式に変換してもよいでしょう.
Xmedia Recodeは,様々な動画・音声ファイル形式やコーデックに対応した高機能なメディアコンバータです.再生機器に合わせたデフォルトのプロファイルなども多数用意されていて,特に難しく考えなくても適切なファイル形式・コーデックでの変換作業が行えます.ELANで音声波形を表示させたい場合に使うWAV形式のファイルを,動画からそのまま変換することも簡単にできます.
初見の作業ではわからない部分も多いと思いますが,変換作業は大きく3つのステップに分かれています.それぞれのステップで一体何をしているのかさえわかってしまえば,難しいことはほとんどありません.このページではMP4形式に変換する手順を説明しますが,他の形式に変換する際も手順は共通です.順を追って見ていきましょう.
まずは全体のパーツの配置と名称から確認します.XMedia Recodeを起動すると右の図のような上下2ペインに分かれたインターフェースが現れます.上部のリスト表示ペインは,変換したいメディアファイルを登録するところ,下部はタブで変換に関する各種設定を行うところです.基本的な作業の流れは以下の通りです.
Xmedia Recodeでファイルの形式変換を行うためには,まず上部ファイルリストに目的のファイルを登録する必要があります(右の図のように).登録する方法は2つあります.ひとつはツールバーの[ファイルを開く]ボタンから目的のファイルを探して登録する方法,もうひとつはエクスプローラ上から目的のファイルをファイルリスト部分にドラッグアンドドロップする方法です.どちらの方法でも結果は同じですから,やりやすい方でかまいません.登録が終わったら,次は登録したファイルを変換する形式やコーデックなどの設定をしていきます.
変換の設定は下部ペイン内で行います.
[形式]と見出しがついているところから,MP4を選択します.図ではAVIとなっているところをクリックするとドロップダウンリストが表示されるので,「MP4」を探してクリックしてください.
[ファイル拡張子]と見出しがついているところは,選択したファイル形式に応じて自動で切り替わります.もし切り替わらない場合は手動で変更してください.MP4形式に変換したい場合は拡張子もmp4となっていればOKです.
次に[映像]タブ内で変換に使うコーデックや,各種設定をしていきましょう.左側に配置されている設定項目の一覧は,一番上の[一般]を選んでおきます.これ以外の設定については煩雑になるためここでは解説しません.
[コーデック]は,MP4形式の場合はMPEG-4 AVC / H.264 としておきます.前述の[形式]タブ内でMP4形式を選択した時点で,おそらくコーデックも初期状態で選択されているので,特に変更する必要はないはずです.AVIにしたい場合はXvidを選択してください.
次に[フレームレート]です.これは「Keep original (元の設定を維持)」でかまいません.下手に変更すると返って扱いにくくなってしまうので注意してください.フレームレートについては書籍版ELAN入門でも簡単に解説していますので適宜参照してください.
[ビットレート]は1秒間あたりの情報量を指定するところろです.右の図では1500と入力されており,これは1500kbps(キロビットパーセカンド)を意味します.数字が大きいほど動画は鮮明になりますが,そのぶん変換後のファイルサイズも大きくなります.ご自分の環境や目的に合わせて設定してください.
次に[音声トラック]タブ内で,音声の設定を確認しておきましょう.MTS形式の動画では画像のように元々の記録が[AC3 256Kbps 48000 Hz Stereo]などになっており,普通は特に変更する必要はありません.AVI形式にしたい場合はmp3にしておくと特別な手順を経ずにデフォルト状態で再生できるメディアファイルが作成できます.
以上,登録・設定の2つの操作が完了したら,次は変換キューに今までの作業を登録しましょう.ツールバーの[リストに追加](青い大きな+ボタン)をクリックします.
するとグレーアウトして押せないようになっていた2つ右隣の[エンコード]ボタンが押せるようになります.この[エンコード]ボタンを押すと元のファイルのスキャン後に変換が始まります.動画の長さやコーデック,ビットレートの設定などに応じて時間が変わりますが,概してかなり長めの時間が必要になります.作業中は相当のパワーがこちらに割かれますので,他の作業をする必要がない時などに実行することをおすすめします.
手順は動画形式の変換で説明した最初の形式選択のところで,WAVを選択すればOKです.設定を変更する必要は特にありません.
以上でXmedia Recodeを使った動画ファイル形式変換の手順説明はおしまいです.Windowsの場合はここで紹介するソフトウェア以外にも多くの選択肢があります.さらに高度な機能が必要になってきたら,「動画」「変換」「任意のファイル形式(aviやmts,movなど)」といったキーワードで検索してみるとよいでしょう.
Macの場合,標準搭載されているQuickTime Playerで,MTS形式のファイルをMOV形式のファイルへ変換することができます.QuickTime Plyaerには書籍版で紹介されている簡易編集機能(トリム機能)も備わっています.変換後の形式はMOVのみで,その他詳細な設定もできませんが,とりあえずELANで再生しやすいMOVファイルをつくりたいのであれば,QuickTime Playerがあれば十分です.手順は大まかに次の通りです.
では使い方を見ていきましょう.
まず変換したいMTSファイルを見つけて,コンテキストメニューを開いてください(トラックパッドで二本指タップ,またはControlキーを押しながらタップ).すると右の図のようなメニューが出てきますので,[このアプリケーションで開く]→[QuickTime Player]とたどって選択してください.QuickTime PlayerはそのままMTSファイルを再生することができるので,選択した動画が開くはずです.動画が無事開けたことを確認したら次の手順に進みます.
次は書き出しの準備をします.Macの場合,画面最上部にアプリケーションメニューがまとめて表示されていますので,ここにある[ファイル]をクリックしてください.すると右の図:上のようなメニューが表示されますので,さらに[書き出す]を選択し,適当な項目を選んでください(1080p,720p,480pは解像度とprogressiveの組み合わせ).
そうすると保存先とファイル名を尋ねるウィンドウが現れますので,適宜場所や名前を決めて右下の[保存]を押してください.時間はかかりますが,あとは変換が終わるまで待つだけです.
以上でMacでの動画ファイル変換の手順説明はおしまいです.MP4ファイルを作成したい場合は,iMovieの書き出し機能を利用するか,サードパーティのコンバータを利用するとよいでしょう.