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19990813



 しかし、こっちの建物とか公園はどこもかしこもじつに遮蔽関係を意識しているな。樹の植え方とかも、単に対称形に植えるだけでなく、どの樹の向こうにどの樹を隠すか、といったことが考えられている。歩いているとその遮蔽関係が刻々と変わって見飽きない。シュトゥットガルト駅のてっぺんのベンツのマークまで中が透けていて、遮蔽の秘儀をもくろんでいるかのようだ。
 公園を散歩してからStaatgalerieへ。イタリア・ドイツ・ネーデルランドの宗教を対比的に見せる展示。絵そのものもいいが、広い空間を贅沢に使ったレイアウトが楽しい。各部屋の向こうまで見渡せるのだが、そのつきあたりに、じつに効果的な絵が飾ってある。イタリアの金を堪能してはっと振り返ると、はるか向こうのつきあたりにドイツの構成的な絵が見える。かと思えばネーデルランドの暗さに行き当たる。そこから近代の真っ黄色な壁の部屋へ抜ける。

 美術館はチケットさえあれば一日中出入り自由らしい。いったん休んでカール・ツァイス・プラネタリウムへ行ってみる。満員なので次の回を予約。リンゴとパンをかじって遅い昼食。
 またStaatgalerie。今度は近代以降。クレーの部屋。ジャコメッティの部屋。贅沢な空間構成だ。中央に円形広場。ドームのような空。タレルの空。

 駅前通りにまたAnatolたちが座っている。「口琴持ってる?」「もちろん」というわけで、Anatolたちとしばらく音を鳴らす。気前のいい観光客なら1マルク入れてくれる。本格的に演奏している連中は、一曲で10マルクは稼いでいるが、ぼくたちは適当に始まって適当に終わるので、1時間でせいぜい20マルクくらい。
 少し休んでマチルダに口琴を教える。舌の使い方を教えると、律儀にれろれろと上下させるマチルダ。歯のすき間から見えてるその舌はとってもいいよ、マチルダ。

 カール・ツァイス・プラネタリウム。説明の映像がほどよく暗い。何よりも星空の暗さをこわさない配慮。プラネタリウムができたのは1923年。年代としてはポスト・パノラマにあたる。パノラマが天井を覆い、周囲に奥行きを見せたのとは逆に、プラネタリウムは天井そのものに映像をドーム型の空として提示した。タレル的な夜。

 陸橋を渡るとベンツのマークは光りながら回っていた。

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Beach diary